富士山から昇る南半球の星・カノープス(小諸市の高峰山)

月明かりに浮かぶ富士山の脇から光跡を描くカノープス=ニコンD5、
ニコンEDAF-Sニッコール500ミリ、12月20日午後11時1分から16分間露光

十六夜の霊峰 脇にキラリ

全天でシリウスに次いで2番目に明るい南半球の1等星「カノープス」。松本市からの仰角は1・6度。冬期間に南天の地平線付近に現れ、すぐに消えてしまう。この星が霊峰・富士山から昇り、夜空を移動していく光跡を、雪に覆われた小諸市の高峰山(2106メートル)で撮影した。
高峰山からの撮影は、2009年の世界天文年から続いている。今シーズンは、車中泊しながらこれまでに11回挑んだ。その撮影メモの一部を振り返る。
10月24日「キュウーウー」。鹿の鳴き声が満天の星空に響き、深まる秋を感じながらカメラをセット。富士山の後方に雲が湧き、カノープスが昇る瞬間は見えず。
11月19日氷点下8度。木々に霧氷が付き、レンズに曇り防止のヒーターをセット。富士山は見えるが、カノープスは現れず。
12月18日この冬一番の寒波。撮影地の積雪は1・3メートル、気温は氷点下18・3度。目を凝らすがカノープスは現れず。
20日午前、新雪をかき分け、撮影地までトレースを付けた。午後9時、アイゼンを装着。機材を背負い雪の斜面を登る。「今夜は撮れるかも…」。そんな予感が的中。午後11時1分。十六夜(いざよい)の月に浮かぶ富士山の向こうにカノープスがキラリと光った。全ての撮影条件が整い、脳裏に描き続けてきた構図をカメラでキャッチでき、心が震えた。
(丸山祥司)