2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

[創商見聞] No.53 権野 由美子 (くんくん亭)

事業継承から新店へ、町に出る覚悟

事業継承から新店へ、町に出る覚悟

―義父母からの継承
 夫(広貴さん)の父母が大町市北部、簗場(やなば)地区の国道148号沿いに「レストランくんくん」を開いたのが1981年です。
 当時は「大町最北のレストラン」で「名物チキンカツ」が人気を集め、多くのお客さまに愛されました。 
 2001年、私が嫁いだ後もお店は義父母が経営していました。私も4人の子育てに忙しかったので、少し手伝っただけですが、お客さまとお話するのは好きでした。
 主人は厨房(ちゅうぼう)に入ってましたが、子どもが生まれたのがきっかけで別の仕事をするようになりました。でも、「ゆくゆくは」と考えていたようです。
 07年ころから義父母とも体力的に店の取り回しがきつくなってきました。特に義母が身体を壊したことから、店は休みがちになりました。大病ではなかったのですが、それまでに随分無理させてしまったのかもしれません。
 お客さまは入っていたのですが、中心になっていた義母が店に出られなくなった影響は大きく、10年代に入ると一時店を閉めました。
 しかし、休業していても問い合わせは多く、「お店、今どんな感じ?」と様子を見に立ち寄ってくださるお客さまが、県内外から絶えなかったんです。義父母が2人で築き上げてきたものの尊さを感じていました。
 15年の春、子育ても一段落し、就職活動を始めた私に、義父母から店の再開を持ち掛けられ、「どう?」「じゃあ」くらいの掛け合いで、私が継承するという形で店を再開しました。
 その時に、老朽化した厨房機器の入れ替えのための資金調達など、大町商工会議所に相談し、力になっていただきました。
―新店とコロナ禍、クラスター
 その後、母と2人で細々と店を続けていましたが、19年の夏、大町市中央商店街の中華料理店俵屋飯店のオーナー北澤恵一郎さんから「お店が全面改装のため一時移転で使用していた仮店舗で、営業をしてみないか」という、とてもありがたいお話をいただき、市街地に出店する決意をしました。
 簗場の店を休業することは忍びなかったのですが、立地面、営業面から考えて現状のお店では限界が見え、特に人通りが少ない夜間の営業は厳しかったのです。主人もいよいよ店に本腰を入れる覚悟をしました。
 秋ごろから資金面のことなどを含め、大町商工会議所へ経営相談に行きました。しかし、結局、見通しが立たず、やむなく断念です。
 とても残念で落ち込みました。ところがほどなく、「市街地に残る土蔵をレストランに改装したら」という話が浮上し、新店舗計画は再開しました。 
 新しい場所も中心市街地で市立病院などにも近い。古い土蔵2棟をリノベーションすれば、雰囲気の良いお店ができる可能性も高まりました。そこから、契約など新店開業に向けての展開は早かったです。
 そこに立ちふさがったのがコロナ禍です。20年春先からの外出・営業自粛でいつ開業できるか見通しが立たない。
 なんとかやりくりして3月に着工はしたのですが、内装、壁塗り、タイル張りなどは全て家族総出で作業しました。
 休校になっていた高校生の子どもたちも手伝ってくれ、土蔵の土台の古い玉石などを真っ黒になりながら運んでくれました。
 なんとかこぎつけたオープンは7月9日です。お客さまが想像以上に来てくれ、うれしかったです。 
 しかし、コロナ禍の影響は大きく、半年くらいのオープン効果を期待したのですが、売り上げはとても及ばない。特に大町市の飲食店でクラスターが発生した8月の1カ月間は本当に苦しかったです。
 不安はありましたが、「始めちゃったし…」という思いも強く、テークアウトメニューも考案しましたが、うまくいきませんでした。
 それでも知り合いを中心に買ってもらい、売り上げ0件という日はなかったのですが、辛抱は続きました。
―これから 
 商工会議所で相談もしました。小規模事業者持続化補助金の申請をし、調理器具のスチームコンベクションの導入も採択され、新メニューの展開も広がりそうです。
 お客さまは徐々に増えている状況です。お店全般の切り盛りは自分、厨房は主人という役割分担の中で、余裕なく仕事に追われる日々ですが、何とか続けさせてもらっています。
 「くんくんといえばチキンカツ」というイメージは定着しています。実はオープン時、お客さまを待たせてしまう可能性も高かったのでランチメニューからは外していました。しかし「待ってでも食べたい」と言ってくださるお客さまも多く、復刻させました。
 先代のチキンカツを超えようという考えはなく、今後もこの味を守っていきたいです。
 私たちに2代目のプレッシャーはなく、店は企業ではないので難しい理念もありません。ただ、義父母の「お客さまには笑顔で気分よく帰ってもらう」という教えを大切にし、これからもおいしい食事を提供するために精進していきたいです。

【ごんの・ゆみこ】 54歳、阿智村出身。2015年に「レストランくんくん」を継承。20年7月「欧風家庭料理 くんくん亭」を夫の広貴さんと開業。
くんくん亭 大町市大町高見町3343-1
☎0261・85・4868