【像えとせとら】物くさ太郎(松本市新村)

立身出世“地域の宝”の物語伝える

日本の昔話「御伽草子(おとぎぞうし)」で「働かず寝てばかりいたが、京に上って出世し、高貴な人の子孫であることも分かり、信濃守護職に任ぜられて120歳まで生きた」とされる物語の主人公。生誕の地という松本市新村には「物くさ太郎伝承地」が整備され、銅像が北アルプスを眺めながら思索にふけっている。
物語の冒頭に「筑摩の郡あたらしの郷(ごう)というところに、不思議の男一人はんべりける」とあり、「あたらしの郷=新村」という推定が、生誕地の根拠だ。住民は古くから彼を「地域の宝」として扱ってきた。
1989年の同地区文化祭で、特別展を開いたのをきっかけに“太郎熱”が再燃。翌年に保存会が発足し、銅像の制作を決めた。住民ら899人から寄付が集まり、91年、市新村児童センター近くの田畑の一角を整備し、銅像を建てた。以降毎年9月、「物くさ太郎祭り」を開いている。
新村公民館では、太郎の物語を漫画にすることを検討している。「子どもたちにもしっかりと伝承したい」と新村芳男館長(70)。
像の作者は市出身の彫刻家、故洞澤今朝夫さん。高さ約125センチ、幅60センチ。桜の切り株に腰掛ける姿は、青年期をイメージして作られたといい、「ものぐさ」というより思慮深く見える。未来の大物は、やはり違うということか。