スポット光に際立つ冬の自然湖(王滝村)

雲間から差し込む一瞬のスポット光を浴びてテントが浮かび上がる冬の自然湖=ニコンD5 ニコンED AF-ニコンニッコール80~400ミリ 2021年2月13日

全面結氷し、冬衣をまとった王滝村の「自然湖」。天空に輝くさそり座の下で演じられる光と影の光彩ドラマをカメラで追った。

冬衣をまとった湖上のステージ

午前5時55分。上空が白み、谷深い自然湖の夜明けが始まった。暗い周囲とは対照的にいち早く淡い群青色の光を集め、凍て付く湖面がかすかに輪郭を現した。
6時10分。薄暗い湖上に、枯れ木立がシルエットのように浮かび上がる。ワカサギ釣りの小型テント数基が、冬の自然湖のモノクロな光景に彩りを添える。
6時45分。突然、左岸近くの針葉樹の茂みから「コト、コト、コトー」。アカゲラとみられるキツツキのドラミングが響いてきた。すると、遠い尾根の上部からも呼応するように「カタ、カタ、カター」。打楽器のビブラスラップが奏でるようなデュエットが、朝の湖上に流れた。
7時33分。朝日が差し込んで陰影が際立つと、湖上の表情が変わった。黒い枯れ木立と青い影が氷上のキャンバスに立体感のある幾何学模様を鮮やかに織り込む。
その後、空が厚い雲に覆われ、狙う構図をひたすら待った。湖面に立ち並ぶ枯れ木を前にしていると、1984(昭和59)年9月に一帯を襲った県西部地震の光景が脳裏に浮かんだ。上空から撮影した濁流の中の緑の木立。思い出した瞬間、待ちわびたスポット光が差し込み、湖上のステージを明るく照らした。