スノームーンに照らされる安曇野のコハクチョウ(安曇野市明科中川手)

満月の明るい夜空に浮かぶ北アルプスを背景に、水面を動き回るコハクチョウ=ニコンD5ニコンEDAF-Sニッコール28~70ミリ2021年2月28日午前1時10分

北帰行最盛期旅立ちの声

「コー、コー、コー」。北帰行最盛期のコハクチョウの旅立ちの声が聞こえたような気がして、2月の満月「スノームーン」に誘(いざな)われるように安曇野市明科中川手の御宝田遊水池に急行した。
2月27日午後11時35分、氷点下5度の岸辺に立った。白銀の北アルプスを背景に水面を動き回るコハクチョウの白い群れが、月の光に照らされて浮かび上がる。
群れが近づいて来た。1羽が首を上下に振った。すると2羽、3羽と続く。飛び立つ前に見せるシグナルだ。別れのあいさつに来たのだろうか?水面でしきりに羽ばたく。月明かりに映える翼を見ていると、4000キロ彼方への北帰行のルートが脳裏で重なる。
コハクチョウは、いったん北海道の屈斜路湖に集結。大編隊を組んでサハリンを経由し、オホーツク海を越える。たどり着く子育ての故郷は、北極海に面した極北シベリアのツンドラ地帯だ。
繁殖地で調査研究し「白鳥の旅・シベリアから日本へ」の著書がある長谷川博東邦大学名誉教授が以前、記者に話した生態研究が興味深い。プラネタリウムで白鳥に北半球の星座を見せると舞い上がるそぶりを見せたが、南半球の星座ではすくんでしまったという。
28日午前3時半。北東方向の空に「はくちょう座」が昇った。安曇野のコハクチョウたちも星に誘われて北へ向かう。「また元気で帰っておいで…」(丸山祥司)