【野遊びのススメ】#8 開田高原「木曽馬の里・乗馬センター」 触れ合って心癒やす

未経験者も安心「引き馬」体験

今夏は例年以上の暑さになりそうとの予報を聞き頭に浮かんだのは、標高1100メートルを超える開田高原(木曽町)の「木曽馬の里・乗馬センター」。爽やかな風に吹かれながら馬の背で揺られたら、どんなに幸せだろう。夢見心地で車を走らせた。
木曽馬の里へは、松本市中心部からだと休憩を含めて約2時間。10頭を超える馬が放牧され、のんびりと草をはんでいた。
木曽馬との触れ合いを提供する同センターは、さまざまな乗馬メニューを用意。屋内馬場もあり、雨でも乗ることができる。今回体験したのは、スタッフが馬を引いてくれて未経験者も安心な「引き馬」。やって来た24歳の雄「豊翔(ほうしょう)」は、ふさふさの栗毛がかっこいい、人間でいえば60~70代のおじいちゃんだ。
くらにまたがり、取っ手を握り、未舗装の道をゆっくりと進む。馬の歩みに合わせて右に左に軽く揺れるが、バランスを取るのは難しくない。カッコウやウグイスの鳴き声が聞こえ、山野草や木の葉の香りが風に運ばれてくる。からっとした空気は高原ならでは。木々の向こうに御嶽山が見える。
綱を引いてくれるのは、生まれも育ちも開田高原で、小学生のころからセンターに通っていたという髭村悟さん(36)。馬に寄ってくる虫たちを、時折手で追い払う。「(豊翔は)繊細で臆病なんですよ」
途中、豊翔が体をびくっとさせ、小さくいなないた。「自分のしっぽが草に当たり、その音にびっくりしたんだと思います」と髭村さん。何だかいとおしくなり、記者も豊翔の首筋に近づく虫たちを追い払った。
コースを1周し、くらから降りる。「ありがとう」。感謝を伝えようと豊翔の首筋を軽くたたくと、手を通じて生命力が伝わってくる。命の尊さを感じる瞬間だった。

通常、引き馬は未就園児から体験できるが、コロナ禍の今は小学生以上に制限している。スタッフと客との接触を減らすため、乗降時に補助が必要だったり、自分でヘルメットをかぶれなかったりする子どもは、体験できない。
ただ、厩舎の見学は自由で、柵越しに馬の顔や首筋をなでるのもオーケー。草を食べさるのも大丈夫だ。場長の中川剛さん(44)は「馬は乗り物ではなくて生き物。触れ合って、いろんなことを感じてほしい」と願っている。

【インフォメーション】
体験は「引き馬」がショート(約2分、600円)、ロング(約5分、1100円)、トレッキング(約20分、4200円)の3コース。自分で手綱を握る「一人乗り」はトレッキング(約20分、3200円~)、馬場(15分、2200円)など。午前10~11時50分、午後2~3時50分。無休。見学は無料。TEL0264・42・3085