【小林千寿・碁縁旅人】#8 勝運

トップの魅力とオーラ

東京で4回目の緊急事態宣言が出される中、多くが無観客となるオリンピックが開催されます。
英国・ロンドンのテニスのウィンブルドン選手権、サッカーの欧州選手権決勝、アメリカのMLBオールスターゲームもマスクなしで満席の観戦。どの選択が正しいのか分かりませんが、コロナ対策が試行錯誤中だと分かります。
そんな厳しい環境の中、アスリートたちは世界中を移動し、練習を怠ることはできません。体を鍛え続けるためには強い精神力、それを支える明晰(めいせき)な頭脳も必要でしょう。
このオリンピックはいろいろな面で人間力が試されています。そして最後は「勝運」がある人たちが勝ち残れる。言葉で言えば簡単ですが、地道な練習の成果を出せる人は僅(わず)か。それも1回だけでなく何年も続けてトップに君臨できる人は、どの分野でも「選ばれし者」でしょう。
囲碁界では先ごろ、井山文裕・本因坊が10連覇を成し遂げました。一生に1回獲(と)るのも大変なタイトルを10年続けて獲得。偉業です。
そして、強いだけでなく「オーラ」を感じさせるプレーヤーもいます。将棋界ならば羽生善治さん(タイトルは多過ぎるので省略)。何度もお会いし親しく話しかけていただくのですが、どこか近づき難い神聖なバリアを感じます。
そして今ならば、アメリカ野球界では長らく見られなかった「投げる・打つ」の二刀流をサラッとこなしている大谷翔平さん。笑顔が爽やかで明るく礼儀正しく滅法(めっぽう)強い。コロナ疲れでストレスが溜(た)まっている私たちが、大谷選手の一挙一動に癒やされていると感じます。
今回のオリンピック代表選手で直近に演技を観(み)たことがあるのは、清水希容さんの空手形。その迫力、美しさ、凛(り)々(り)しさに惚(ほ)れ惚れとしました。
オリンピックで世界のアスリートの健闘を祈ります!(日本棋院・棋士六段、松本市出身)