澤頭さんの「さわ文庫」一般公開 木曽の資料がずらり

木祖村のJR薮原駅から薮原宿に向かう道沿いに「さわ文庫」の看板が立っている。同村薮原の郷土史家、澤頭(さわがしら)修自さん(90)が、自宅敷地内の現在は使っていない建物を活用。長年集めた木曽郡に関係する書籍や資料などを収めた書庫にし、一般に開放しているのがこの文庫だ。「地元の住民だけでなく、旅人など、誰でも自由に見てもらいたい」と願っている。
1階は車庫、2階は書斎だった2階建ての建物を「さわ文庫」に改装した。
木曽地域に関連した書籍のほか、43年間、木曽郡内の小学校教員だった澤頭さんが集めた地域の資料や、新聞の切り抜きなどをまとめた千冊以上がずらりと並ぶ。
自然、文化、観光、歴史など、分野は多岐にわたり「これだけ木曽地域に関連する資料を持っている人はいないと思う」と自負する。
また、開田村(現木曽町開田高原)の風習などをまとめた自著「御嶽の見える村」などのほか、教員時代に知り合い、本を書く際に大きな影響を受けたという児童文学者の庄野英二さん、作家の菊池重三郎さん(いずれも故人)の著書もある。

木祖村出身の澤頭さん。高校時代から民俗や歴史に興味があり、「ふるさと木祖村の生活を写真に残したい」と、地元を巡って撮影してきた。
教員時代は木曽郡内の教員仲間でつくった「郷土研究会」に入り、本格的に木曽地域全域の調査を開始。休日は、カメラ片手に郡内各地を訪ね、地元への愛着と探究する思いを強くした。
退職後は、約10年間かけて完成させた「木祖村村誌」の編さんにも深く関わった。
「地域をより深く知り、勉強になった」と、これまでの活動を振り返ると同時に「子どもたちに故郷の大切さを教えなければ」という使命感も生まれたという。
自身の調査をファイルにまとめたり、写真に残したりしたのは不確かな人の記憶を正確に後世に伝えるためで、「さわ文庫」に至る原点だ。
「みんな、自分の古里は大事」と澤頭さん。「長年集めてきたものを独り占めするのはもったいない」と笑い、「通りがかったら、気軽に寄ってもらい、何かの参考にしてくれればうれしい」と期待する。

原則、晴れの日は一般公開しており、入り口のシャッターが開いていたら自由に出入りできる。本などの貸し出しにも応じるが、必ず返却するなど、基本的なルールを厳守。