母校創立100周年 結束強い県陵同期会 「いまだ青春」絆が生きがい

当時の応援団長のかけ声で「フレーフレー県陵」と声を合わせた参加者(県陵二八会総会)

今年、創立100周年を迎えた松本市の松本県ケ丘高校(通称=県陵(けんりょう))。旧制松本第二中学校時代からの卒業生の数は3万人近くに上り、同窓生の母校愛の精神、結束力の強さは広く知られるところだ。社会へ出てからも同期生が横のつながりを大切にし、青春時代の友情が「人生100年時代」の県陵生の生きがいになっている。

70年変わらぬ友情誇り

♪風が十字に荒ぶれ狂う─。9月29日に同市浅間温泉のホテル玉之湯に集い、拳を振りながら校歌を熱唱したのは、1953(昭和28)年3月に卒業した「県陵二八(にはち)会」(高5回卒)の17人だ。松本近郊の同期生が中心になり名簿を整理し、66年に1回目の総会を開催。以来、恩師も招き毎年のように同期会の総会、懇親会を開き、旅行や定期的な会報発行も。東京、関西、中京圏にも幹事を置き、活発に旧交を深めてきた。
高齢になり、400人近い会員の約4割が亡くなったことなどを背景に、米寿記念と卒業70周年、母校100周年の節目の今年で、会の活動は一区切りすることに。この日は55回続いた最後の総会。都内や名古屋市から駆けつけた仲間もいた。
当時は男女共学開始直後で女子生徒は少ない時代だった。松本市のOGは「寂しいが、この年まで仲良くできたのは会を立ち上げ、つないでくれた仲間がいたから」としみじみ。発足から長年事務局長を担った山﨑正治さん、会長や同校校長、県陵同窓会長も務めた佐藤彦雄さんら、他界した仲間の尽力に感謝した。
最後の総会を終え、会長の上原明寿さん(89、同市横田3)は「本音で語れる仲間と、打てば響く友情。いまだに青春を凝縮したような私たち」と、70年前と変わらぬ間柄を誇り、「人生100年時代。まだ余白は十分で、少人数になったが濃い関係はむしろこれから」と、生涯続いていく深い絆を再確認した。

90過ぎても集まり学ぶ

米寿記念同窓会の際に見学した国宝旧開智学校の校舎前に立つ県二会メンバー(2019年。坂井さん提供)

90歳を過ぎてもなお、集い、学び、笑い合う同期生の会がある。49、50年の卒業生による「県二(けんじ)会」(中22回、高2回卒)だ。卒業間もなくから同窓会を開き(現在はコロナ禍で中止)、春と秋には各地の史跡などを訪れる勉強を兼ねた小旅行にも出かける。
旧制中学から新制高校への移行期の生徒で5~6年間を共に過ごし、戦中、戦後の物資の乏しい時代に助け合い、初代小松武平校長の遺訓「県陵三大精神」の下で切磋琢磨(せっさたくま)した仲間の結束は、卒寿を過ぎた今も揺るがない。
220人以上いた仲間で連絡が取れるのは30人ほどに減ったが、会の役員は最近まで毎月集って交流してきた。会のまとめ役で事務局も務める坂井廣昭さん(92、同市城西1)は「気心知れた仲間となら外へ出やすいし、みんな集まると楽しいもんだよ。この年になっても新しい発見や学びはある」と話す。「何でもやった方がいい。やめるのはいつでもできるから」。旧友の存在が生きがいや健康、日々の張り合いにつながると実感している。
同校には、新制高校1回卒業生から続く、卒業30周年での母校支援の取り組み「母校愛のリレー」がある。同期生が旧交を温める機会ともなり、「県陵愛」を醸成する結束力の源の一つにもなっている。