軽やかにステップ 92歳のダンス生徒

ダンスで健康で快活な毎日

松本市の社交ダンス教室「松本高等ダンス学院」(大手1)に毎週、92歳の生徒が通っている。約30人の学院生徒で最高齢の藤原義一さん。
2002年春、妻の千恵子さんと共に神戸市から息子がいる松本に移住し、夫婦で同学院に入門した。7年前、千恵子さんに先立たれた時はダンスが心の穴を埋め、以来、レッスンやダンス仲間との交流が生きがいだ。
藤原さんは「肝心の腕前はまだまだ」と謙遜するが、同学院講師の常谷茂樹さん(42)は「藤原さんは姿勢が良く、動きが若々しい」と絶賛。レッスン仲間の清沢政子さん(83)も「リードが上手なので楽しく踊れます」と話す。
「ダンスは中高年にお勧め」と藤原さん。その理由も聞いてみた。

妻亡くし失意も もう一度仲間と

タンゴ、マンボ、ワルツ─。藤原義一さんが清沢政子さんを前後左右にリードする。軽やかにステップを踏む姿は、92歳という年齢を感じさせない。
20年前、妻の千恵子さんと新天地・松本の街の散策に出かけた際、「松本高等ダンス学院」の看板を見つけた。聞こえてきたラテン音楽にひかれ、社交ダンスのレッスンを見学した。
目にした光景に驚いた。「80歳の女性がはつらつとマンボを踊っていたのです。当時の私より8歳も上。『信州の女性は活発』と聞いて松本に来ましたが、予想以上でした」
刺激を受けた夫婦は「私らのような初心者でもできそう」と即入学。息の合ったダンスでめきめき上達した。友人もでき、パーティーで踊る楽しさも知った。
だが2007年、千恵子さんを重い病魔が襲う。藤原さんは看病に専念し、レッスンから足が遠ざかった。8年後、千恵子さんが旅立った後は家にこもりがちになった。それでもダンスを忘れられず、「もう一度仲間のもとに」と5年前、レッスンを再開した。

周りを励ます最高齢の生徒

藤原さんはいつしか最高齢の生徒になり、周りを励ます側になっていた。励まされた一人、清沢さんは「私がけがで挫折しかけたとき、藤原さんに『また一緒に踊りましょう』と声をかけられ、前向きな気持ちを取り戻せました。みんなが『藤原さんが頑張っているのだから私たちも』と話しています」と感謝する。
ダンスは藤原さんに健康な体も与えた。「健康診断では毎回数値を医師に褒められます。バランス感覚も維持し、よろけたりつまずいたりしません」と藤原さん。「ダンスは中高年が快活な日々を送るのにうってつけ。初心者も大歓迎なので、見物がてら学院のクリスマスパーティーに来てみては」と新たな仲間を求めている。
クリスマスパーティーは12月24日正午から午後2時まで同学院で。問い合わせは常谷茂樹さんTEL080・5143・6734