暁の空に現れた黒龍の「龍神雲」(松本市・美ケ原高原)

朝焼けが始まった空にリアルな姿で現れ、神秘的な雰囲気を漂わせる黒龍を連想させる「龍神雲」。左上部は金星=ニコンD5、ニコンED28~70ミリ、2024年1月17日午前6時25分、武石峰・松本市側

幸せや元気届くことを祈って

氷点下9度と冷え込んだ1月17日午前5時50分。明けの明星が輝く美ケ原高原武石峰の県道美ケ原公園沖線沿いに立った。
6時15分。撮影目的は、白銀の北アルプスの上に現れる長大なビーナスベルト(空がピンクの帯状に染まる美しい自然現象)と、地球影(ちきゅうえい)と呼ぶ群青色に見える地球の影の撮影である。
6時25分。地平線付近が朝焼けに染まり、王ケ頭の電波塔群が浮かび上がる。無意識に松本平方面を振り向いた瞬間、流れが速い気流とともに黒っぽい帯状の雲がぐんぐん迫ってきた。「錯覚か?」。目線の先の光景を疑った。先端部を急速に変幻しながら龍の頭部が整った。「信じられない、龍神雲だ!」。意識外の撮影に大慌て。600ミリ望遠レンズを急いで標準レンズに交換。移動が速く少し後追いの撮影になってしまった。
龍神雲は、松本方面から稜線(りょうせん)を超え上田市方面に消えた。整った龍の表情は約15秒間だった。
昨年11月27日の満月の中に現れた黒龍の龍神雲は、元日紙面に掲載したばかり。昨年暮れと新年早々リアルな姿で現れた黒龍の龍神雲。不思議な縁に驚きつつ、撮らせてくれた大自然に感謝である。
辰年の今年、悲しく暗いニュースで幕を開けたが、黒龍が放つ幸せと元気の波動が、多くの人の心に届けばと願う。

(丸山祥司)