2020年東京で初採用され、今夏のパリでは追加競技、28年ロサンゼルスでは五輪の正式競技に決定した「スポーツクライミング」。一流選手たちが、忍者のように壁を登っていく姿に感心する一方で、一般人には敷居が高い気もする。しかし「老若男女、誰でもできるスポーツ」と話すのは、元国体選手の早石利枝さん(51、朝日村古見)だ。
スポーツクライミングの裾野を広げ、生涯スポーツとして普及させたいと「一般社団法人ソーシャルクライミングクラブ(SCC)」を創設、県内各所で大会を運営し、練習会や初心者講習会を開いている。27日からは塩尻市広丘野村のクライミングジム「ハンドジャム」で子どもと女性の教室を開く早石さんに、話を聞いた。
国体出場の経験育成にも生かし
早石利枝さんがクライミングを始めたのは1997年、25歳の頃。山岳部出身で一緒に登山をしていた友人が興味を持ったため、2人で松本市内のジムを訪れたのがきっかけだ。
壁に配置された幾つもの「ホールド」を手掛かり、足掛かりとして登っていく。登る前にどのホールドをどう使い、どんなルートで上まで行くかを考える。「動きを読み解くパズルのよう。それが読み解けたときが最高に楽しい」と魅力にはまり、妊娠中も出産の1週間前まで登っていたという。
出産後も競技を続け、2012年の岐阜国体に初出場。その後も大会出場を重ねてきたが、18年の福井国体を最後に「これからは、次の選手を育成していこう」と競技を引退し、国体選手やユース選手の強化育成に関わり始めた。
その翌年にはユースクライマーが育つ場をつくろうと大会を開催。「県のクライミングを絶やしてはいけない。裾野を広げる足掛かりをつくりたい」と、22年にソーシャルクライミングクラブ(SCC)を設立。大会の運営や講習会の他、自立式のクライミングウォールを携えて依頼先に出向き、出張体験会も行っている。
クライミングは、日常生活で前かがみになりがちな体を開いたり、手を伸ばしたりぶら下がったりするため「健康の維持につながる」と早石さん。インナーマッスルを使うので姿勢が良くなり、空間認識力がついて距離感がつかめるようにもなる。そのため、他のスポーツの補助的な運動やシーズンオフのトレーニングに取り入れる人もいるという。
また、体の大きさや体重、筋力の強さなどに関わらず、重心の取り方や足の使い方など、自分なりの工夫で登れるので、老若男女が同じルートに取り組めるのも魅力という。「やる前に『自分なんて無理』と言う人は多いが、やってみて無理だった人はいない。多くの人に魅力を知ってほしい」と話す。
早石さんに話を聞いている間も、クライミングジム「ハンドジャム」には愛好者が次々と来館し、壁に挑んでいた。「農家なので、雨の日や農閑期に1年ほど前から来ている」という北村陽さん(41、山形村上大池)は「隙間時間で体を動かせる。前回行けなかった高さまで行けた達成感や目標があるのもいい」と笑顔で話した。
SCCの活動や出張講習会の希望などはインスタグラムから。ハンドジャムでの教室はキッズが午前10時、女性が午後0時半からで各2千円。クライミングシューズのレンタルを利用する場合は別途350円。キッズは毎月開催予定で初回のみ保険代800円。要望に応じて増やしていく。申し込みや問い合わせは同ジムTEL0263・87・3874