自宅出産した吉澤さん 選んだ理由や当日の様子は

第1子は病院、第2子は助産院、そして第3子を2月に自宅で出産した安曇野市の吉澤茉帆さん(39)。自宅を選んだ理由や当日の様子などを聞きました。

日常の中で命が誕生すること

★3人目は自宅で
吉澤さんは夫の中村大樹(たいき)さん(41)、長女・歩野花(ほのか)ちゃん(5)、次女・日々(ひび)ちゃん(2)、長男・子太郎ちゃん(3カ月)、自身の両親と祖母の4世代8人で暮らしています。
祖母は自宅、母親は病院で出産しましたが、共に死産を経験。独身時代にこの話を聞いた吉澤さんは出産に対して恐怖を抱き、どこで産んでもリスクがあると実感しました。
初めてのお産は助産院のつもりでしたが、体の状態が万全でなく病院へ。2人目は助産院で、3人目の妊娠が分かると自宅出産を望みました。
その理由は、「出産後の一番ぼろぼろな状態から少しずつ回復していく(出産入院したときの)5日間を夫に見せたかったから。上の2人の立ち合い出産では見せられなかったし、それを知っていればお互いを理解し合えると思いました」。
大樹さんは賛成。吉澤さんの母親は心配しながらも「パパとママが決めたことなら協力する」。経験者の祖母も賛同します。
出産までは助産院で検診を受け、自宅で産むのに必要な準備も教わりました。そして陣痛が始まった頃、助産師が駆け付け、家族全員がそろった2月12日午後6時半、自宅リビングで子太郎ちゃんが誕生しました。
「母や祖母は祈りながら、不安で少し体調が悪くなった父は少し離れた所で見守り、夫は私がしてほしいことを淡々とやってくれました。上の2人は生まれる時に『髪の毛が見えてきたよー』と声を上げ、出産後はみんなで胎盤を食べました」
★家族の支え
大樹さんは今回、育児休暇を1月から半年取って準備しました。
吉澤さんは「産後数日は動けない状態が続き、やってほしいことを言葉で言えないくらい疲れます。『自分で考えて寄り添ってほしい』などの思いを伝え、たくさん話し合いました。最初はピンときてないようでしたが、最終的に感じて活躍してくれたので、パートナーとして任せられる気持ちが大きくなりました」。
自宅出産の良さは、日常の中で命が誕生することといい、「ママが家にいて、他の子どもたちをよしよしするだけで安心したり納得したりすることもあります」。日々ちゃんが生まれた時は、歩野花ちゃんが「赤ちゃんにおっぱいをあげないで!」と言いましたが、今回は2人とも赤ちゃん返りは少しあるものの、温かく迎え入れたといいます。
一方で、看護師がいる病院や助産師がずっと付き添う助産院とは異なるため「初産だと厳しいかも」と言います。
「わが家は夜泣きをすると慣れないながらも夫があやし、家事などは母と祖母が協力してくれました。そういう支えがないと孤独を感じるかもしれません」
今回かかった出産費用は、出産一時金を差し引くと数千円といいます。「金額より、夫婦として貴重な経験を共有できたことが大きい。上の子どもたちにも、自分もこうやって生まれてきたんだとか、母親の一生懸命な姿を見せられて良かったと思います」