【醸し人】#14 山辺ワイナリー 醸造責任者・遠藤雅之さん

爽快感 個性は控えめに

江戸時代中期に県内で初めてブドウが植えられ、明治初期から栽培が本格化したとされる松本市山辺地区。JA松本ハイランドや農家などの出資で2002年に誕生し、歴史あるブドウ産地に新たなページを加えたのが山辺ワイナリー(同市入山辺)だ。醸造責任者の遠藤雅之さん(49)らが醸すのは、風通しが良く爽快感がある土地柄を映した飲みやすく、飲み飽きないワインだ。

「食事や社交の場でワインは中心ではなく、食や人の交わりの引き立て役でありたい」。美ケ原高原の麓で醸すワインの個性は、あえて控えめ。飲み慣れない人にも入門編になりやすい“出しゃばらない”ワインには、そんな思いや願いが込められている。
同地区は果樹栽培の好適地。デラウエア、ナイアガラなどの生食用ブドウの産地として歴史を刻んだ土地柄、生食向け品種で造るワインが半数を占める一方、自社栽培を含めたワイン用品種の銘柄も充実している。
原料のブドウは山辺地区を中心に全量が地元産。収穫期には直接ワイナリーに持ち込む農家もあり、生産者の顔が見える関係性は「丁寧な仕事の原動力」という。計1・2ヘクタールの自社農園ではシャルドネ、ピノグリ、ソービニヨンブランなどを栽培。「傘かけ」など、健全な果実に仕上げるための手間暇は惜しまない。
新潟県出身で信州大農学部卒業。県内の別のワイナリーを経て山辺ワイナリーの開業時から醸造に携わる。
若い頃、自転車で全国各地を旅した。現地で出会う人と、酒を酌み交わして打ち解け、酒の面白みを実感。ワイン造りに携わる今も当時の思いが原点だ。「ワインは楽しく飲む酒。造り手も楽しく造りたい」。ワイン造りに愚直に向き合う日々だ。

【沿革】
やまべワイナリー2002年開業。JAと地元農家らが出資する「ぶどうの郷山辺」が運営し、農産物直売所「ファーマーズガーデンやまべ」、レストラン「マリアージュ」を併設。07年から山辺地区内に自社農園を設け、ワイン用品種を栽培。日本ワインコンクールでは12年から連続入賞。

デラウェア甘口2018年(720ミリリットル1450円)

【相性のよい料理】
カッテージチーズ、蜂蜜がけのヨーグルト、スモークタン、オレンジマーマレードのシフォンケーキ

【連絡先】山辺ワイナリー
℡0263・32・3644