塩尻のソフトウエア開発会社 若手社員の力でオリジナル製品

20代のセンスと感性に期待

「IT(情報技術)系の会社が成長するには、人に投資するしかないんです」。きっぱりと語るのは、ソフトウエア開発などを手がけるユリーカ(塩尻市広丘野村)の青山雅司社長(46)だ。
1981(昭和56)年の創業以来、大手企業からの受託事業がほとんどだった。昨年初めて、同社のオリジナル製品「セカイデル」を開発した。担当したのは入社3年前後の20代社員3人。まさに青山さんの「投資先」だ。社運が懸かる事業を委ねた彼らには「失敗してもいい」と声をかけたという。
社名は「分かった!」「見つけた!」を意味するギリシア語で、歓喜の表現としても使われる。ユリーカの社内に、社名を叫ぶ声が聞こえてきそうな雰囲気が漂っている。

日本のいい物海外へと発信

ソフトウエア開発会社のユリーカが、創業以来初めて開発したオリジナル製品「セカイデル」は、メーカーや小売業など、国内企業の海外展開を支援するサービスだ。
具体的には、世界中の国と地域に自社製品を配送可能にする越境EC(電子商取引)の構築・導入の支援サービスで、▽海外市場は魅力的だが進出の仕方が分からない▽ECのノウハウがなく不安▽費用や資源が足りず踏み切れない▽外国語が分からず機会損失している▽海外への配送や決済が不安|といった悩みを解決するという。
このサービスを開発したのは、ユリーカに2021年1月に入社した経営企画室室長の武居功祐さん(26)、22年4月入社で経営企画室所属の菱田茜さん(20)、23年4月入社で、IT事業本部に所属し、武居さん、菱田さんのサポートメンバーの新一真さん(24)。3人とも新卒で採用された。
昨年10月頃、青山雅司社長から3人に、「何か新しい製品の開発を」というミッション(任務)が出された。3人は、日本酒や漆器、ギターなど、地元にある「日本のいい物を海外に発信する」という方向性を基本に、話し合いを重ねた。途中、青山社長も「口は出した」というが、最終的には若手でアイデアなどを集約。約1カ月後には「セカイデル」を完成させた。
リーダー役の武居さんは「本当にいい物を作っていても、『世界に打って出たら』と提案すると、躊躇(ちゅうちょ)されることが多い。そうした人たちの力になりたい。それと、自分たちも『世界に出る』という願望があった」と、商品に込めた思いを話す。「こうした仕事を任されうれしいが、責任もそれ以上に感じている」と、背負うものの大きさを実感している。

父から継いだ2代目が決意

同社は創業以来、大手企業などのシステム製作を主力にしてきた。2013年に父から事業を継いだ2代目の青山社長。約2年前、「機が熟した」と、これまでの仕事は固定化し、ゼロからサービスを作る新たな箱(部門)をつくろうと決意した。そこで働く社員を募ったところ、ただ一人手を挙げたのが、入社間もない武居さんだった。
そこから経営企画室を設け、新事業に向けスタート。今回の「セカイデル」完成が一つの成果となった。
青山社長は「ITの世界と同じように、物づくりの世界も世界とつながるよう、その架け橋にしたい」と新商品の特長をPR。「今後、次々と新サービスを開発するのが3人のミッション。若いセンスと感性を発揮してほしい」と、期待を寄せた。