どぶろく楽しんで─松本に初の醸造所

「いとこ同士」がっちりタッグ

クラフトビールや小規模ワイナリーの商品などの人気が定着するる中、松本市初のクラフト酒(どぶろく)の醸造所「松本どぶろく醸造所」(大手4)が、昨年12月に誕生した。
米のうまみを余すことなく楽しめるどぶろくを造りたいと、居酒屋店主の志賀丈師さん(57)と、長年県内の酒蔵で醸造責任者として酒造りに関わってきた田中勝巳さん(59)が、がっちりタッグを組んだ。いとこ同士だけに結束は固い。
醸造所にはバーも併設し、造りたてのどぶろくと、ちょっとしたつまみも楽しめる。
これまで試験醸造だったが、今月から本格的に醸造、瓶詰めをして販売もする。果物と一緒に仕込むなど、松本らしさもどぶろくで表現していく。

卸やバーも併設気軽に味わって

松本市大手4、「居酒屋一歩」の隣に「松本どぶろく醸造所」はある。クラフト酒(どぶろく)の醸造、卸、販売の他、バー「松本doburock(ドブロック)」を併設。おしゃれな店内でどぶろくを中心に、ワイン、日本酒、ウイスキー、簡単なつまみも楽しめる。店内を奥に進むと、醸造所だ。
居酒屋一歩の店主・志賀丈師さんが社長、県内の酒蔵で26年酒造りに関わってきた田中勝巳さんが共同経営者・醸造責任者。二人はいとこだ。「酒蔵でどぶろくを造る所はあるが、個人でのどぶろく醸造販売は松本では初。県内でも珍しいのでは」と昨年5月、松本どぶろく醸造所を設立。11月に酒類製造業営業許可を取り、12月にオープンした。
発泡性があり、口の中で甘さと酸味が混じり合う絶妙なバランスが、どぶろくの魅力という。田中さんは酒蔵の醸造責任者時代、こす前のどぶろくを酒蔵見学に訪れた人に味わってもらったことがある。「100%おいしいと言われた。酒造りに重要なのはこうじ、酒母(しゅぼ)(培養された優良な酵母)、造り(醸造のこと)の順。どぶろくは酒母と同じような味わい。多くの人に知って、楽しんでもらいたい」

体と心によい酒信州らしさ模索

どぶろくと濁り酒はどちらも白く濁り、外見が似ているが、違いは何なのか?どぶろくは米、米こうじ、水を発酵させ、もろみをこさずに造る。こすのが濁り酒だ。
搾った後の酒かすの成分は炭水化物やタンパク質の他、アミノ酸、ビタミン、酵母など栄養素に富み、健康効果が期待される食品として見直されているという。どぶろくはこうした物を全て含むため、「オールインワンな酒」と田中さんは言う。
試験醸造のため、1回9~18リットル造るだけだが、本格化すれば160リットル仕込める。味はスイートとドライがあり、スイートは「酒千蔵野(しゅせんくらの)」(長野市)の、ドライは「豊島屋」(岡谷市)のこうじを使った。米は松本市島内の浜農場のコシヒカリで、精米歩合は84%。今後は米と向き合いながら変えていくといい、「米のうまみを存分に引き出す精米を考えていく」。
信州色を出そうと、イチゴ、リンゴを飲む時に入れているが、造りが本格化すれば仕込み時に入れる。果物王国・信州らしく、どぶろくと相性のいい果物を模索していく。
アルコールは5%程度にとどめ、気軽に飲んでもらえるクラフト酒に仕上げた。通常の酒に比べるとこうじは倍以上入っており、「飲む点滴(甘酒のこと)のアルコール版。体にも心にもいい」と田中さん。志賀さんは「出来たてのどぶろくをこの場で楽しんで。醸造所を見ることもできる」。クラフト酒は、アルコールの選択肢の一つとして、楽しみを増やしてくれそうだ。
松本doburockの営業は午後1~7時。火・水曜定休だが、仕込みの状況により月・火曜になることも。TEL0263・88・8939