松本のウェブエイト「広報AIスタッフ」CM起用

無給だが、辞めたり、スキャンダルを起こしたりといった心配がなく、企業のイメージにぴったり─。松本市のホームページ制作とブランディングの会社「ウェブエイト」(神田1)は、そんな理想的な社員2人を採用した。広報担当で、1月28日からテレビCMに出演している。その正体は人工知能(AI)。県内でのCM起用は初めてという。
同社は創業当初から手がけるホームページ制作、ウェブマーケティング・ブランディングの売り上げが逆転。昨年ロゴを刷新するなど変革のタイミングが重なったことから、テレビCMも新しくし、社の特長、強みを盛り込んだ。
12日まで2人の名前を募集中。「AIの可能性は大きい」とし、今後は他企業にも、広報AIスタッフ採用養成プログラムを販売する。

社風に合わせた男女2人を採用

1月28日から毎週日曜午後10時59分、SBCテレビで流れるウェブエイトのCM。男女2人のスタッフがナレーションを担当し、草間淳哉社長(46)が、ビジネスのポイントなどを話す動画だ。
男女2人の話し方、動きになんら違和感はないが、実は人ではない。同社が最近採用した(作った)広報AIスタッフで、まだ名前も決まっていない。
ウェブエイトは2008年設立。当初はホームページ制作が主な業務だったが、その後、ウェブマーケティング、ブランディング分野に進出。コロナ禍前は、ホームページ制作が売り上げの7割ほどだったが、昨年はコンサルティング業が8割と逆転した。
自社のリブランディング(ブランド再生)のタイミングと判断、広報AIを使ったCMを作ることにした。業界を引っ張りたいと「今のミッションは、0から1を2歩先へ」と語る内容。AIをどうやってお金に変えるのか分からないといった疑問に、実物を示して答えたい思いもあった。
CMを作りたくても、テレビなどへの顔出しを渋る社長や社員もいる。タレント起用は多額の費用がかかる。こうしたマイナス面を打破する、ブランディング会社らしいCMができた。「芸能人になりすぎない。クリエーティブな社風に合った2人を採用した」と草間社長。

活用プログラム他社向けに販売

AIの動きや体形は生の人間を撮影、30歳前後というイメージで顔を変えた。現在はテレビCMだけだが、今後はカタログや名刺などに掲載、「ウェブエイトの顔」として活躍する予定だ。
他社でもあらゆる広報や宣伝物にAIを活用できるよう、「広報AIスタッフ採用養成プログラム」を開発。3月に発売する。容姿など自社の業種や社風にぴったり合った人材を作れる上に、標準語だけでなく、方言を使う、イントネーションを変える、といったことも可能だ。初期投資30万円弱で、いろいろな人を採用できる。
AIの可能性は大きい。「セミナーの講師を務めるAIを作るなど、人の作業は圧倒的に減る」と草間社長。半面、「AIに仕事を奪われるのでは」と不安を抱える人もいる。「アイデアから何かをつくりだしたり、決めたりするのは人にしかできない」。効率が良くなれば、働き方改革にもつながる、と期待する。
性別、年齢、容姿などを変化させ、今後さまざまなAIが登場する。人間といい状態で共存する日も遠くないかもしれない。
12日まで、2人の名前を募集中。14日に決定し、3月3日からテレビCMには名前入り広報AIスタッフが登場する。
応募は同社のホームページから。