「空き家」活用魅力伝えたい 池田の不動産会社

地域の活性 将来見据えて

人口と世帯数の減少や建物の老朽化などに伴い、「空き家」は年々増加傾向にある。放置されたままだと、地域の魅力低下や景観環境の悪化など、負の連鎖を起こす要因にもなりかねない。
池田町池田の不動産会社「遠条」は、空き家を買い取って改修し、新たな価値を加えて売却や賃貸を行う事業を手がけ、地域ににぎわいの場を生み出している。代表の猿田正志さん(73)は「空き家に活用方法があることを、多くの人に知ってほしい」と話す。
ここ4カ月で、同町の旧繁華街にある空き家を活用したカフェや交流の場が、相次いでオープン。イベントやマルシェを開いている。「放置空き家があふれてしまう前に、地域全体で将来を考えていきたい」と猿田さんは語る。

不利な条件でも価値生み出して

年を経るにつれて建物の価値は下がる。放置し続けると資産価値よりも解体費が上回り、不動産価格が0円、またはマイナスになってしまう…。
かつて商業の町、宿場町として栄えた池田町。県道大町明科線沿いの旧繁華街には、間口が狭く奥行きが長い「うなぎの寝床」のような家屋が多く隣接する。重機が入れない幅なので解体する場合は手作業になり、費用が高くなる。改修しても日当たりが悪く住環境として適さないといった、不利な条件の空き家が多い。猿田正志さんが手がける建物の多くは、そんな買い手のつかない“負動産”だ。
「古い建物を有効活用し、拠点として新規事業者や移住者に提供できれば、町の活性や移住促進につながるのでは」と猿田さん。外注せずに自社で改修することで、価格を抑えられる。マイナスをプラスに転換、新たな価値を生み出している。町県道沿いの2例を紹介する。
改修したうなぎの寝床の1軒を活用して昨年10月にオープンしたのは、「地域資源をプロダクト」「人と人をつなぐ」がコンセプトのコミュニティーカフェ「からびな」。地域の活性化に力を入れる4DeeR代表の遠藤孝昭さんが運営する。
地域で魅力ある活動に取り組む人物の紹介、社会課題をテーマとした映画鑑賞会など、コンセプトに沿ったイベントを毎月開いている。参加者同士のつながりを深め、地域に興味や関心を寄せてもらい、在り方や可能性を探るのが狙いだ。地元食材を活用したメニューの提供もある。
12月には、空き家の跡地を活用したイベントスペース「CHILL(チル)OUT(アウト)SQUARE(スクエア)」が誕生。今月から月1回、飲食店やキッチンカーが参加するマルシェを開いている。敷地内の小さなログハウスには、ベトナム料理店「Rens(レンズ)Dining(ダイニング)」がオープン。ベトナム出身のグェン・リェンさんが、フォーやバインミー、ブンチャーなどのベトナム料理を提供する。
遠条は、「CHILLOUT─」隣接の土蔵を改修した1階を事務所としている。2階には県外作家の作品を置くギャラリーも完成。今後定期的にイベントを開催する活気ある場所になりそうだ。

「空き家バンク」相談呼びかけ

活動の始まりは3年前。同町に空き家バンクが創設され、バンクを有効活用するための実戦部隊「池田町空き家等活用連絡会」に、猿田さんが参加したことがきっかけだ。空き家バンク創設後3年で約120軒の空き家が登録され、8割が活用されている。猿田さんが買い取り改修し、活用されているのは10軒に上る。
「この町に『住みたい』『寄ってみたい』と思ってもらえる町にしたい」と期待を込める猿田さん。「空き家の悩みを抱える人たちにはぜひ空き家バンクに相談を」と呼びかける。