
救世主は暑さに強い「にじきら」
田んぼでは稲が出穂期を迎えている。茎の中に穂の赤ちゃんが出て、栄養を取り込み始める。より大事になるのが光合成だ。照りつける日光でフル稼働できると、豊かな稲穂が実る。だから、暑い夏は歓迎すべきなのだが、最近は暑過ぎるという嘆きが農家から聞こえてくる。
松本市島内の農業法人「北清水」の清水久美子社長(47)は、毎朝、毎夕、田んぼの水を見て回る。この時期に気にするのは、量ではなく温度だ。いわゆる高温障害を防ぐために、冷たい水を田んぼに入れたい。
稲作を始めて15年、父から、味と量の決め手は水管理と教わったが、ここ5年ほどで暑さ対策の意味合いが急に増した。特に、夜に気温が下がらなくなった。夜温(やおん)が高いと、稲は光合成しないのに活発で、穂にためる栄養を浪費してしまう。
それを防ぐため、夜はかけ流しが理想だという。農協もそう勧めるが、水量がなかなか望めない。北清水の田んぼが水路の下流にあることも悩みの種だ。
そんな中、期待の大きい稲がある。暑さに強い「にじのきらめき(にじきら)」。高温耐性品種として全国的にも注目を集め、北清水では今年、27ヘクタールのうち6ヘクタール弱で作付けした。
初めて作ったのは5年前、2ヘクタールだった。社員の高山徹さん(45)が県外で「コシヒカリに代わる救世主」という評判を聞いてきた。
触れ込みは本当だった。作りやすくて多収量の上に高温に強い。そして味もいい。高山さんの基準は、ラーメンライスに合うか|だが、「にじきらはおいしい。納得した」。
ただ、香りが弱かった。それを克服しようと試行錯誤を重ねた。そして昨秋、山形県で開かれた食味コンテストで入賞を果たした。
「まだコシヒカリのブランドが強いが、にじきらも知名度が上がればもっと食べられるようになる」と高山さん。消費者がさまざまなコメに目を向けるコメ不足は、その一つのきっかけになる。救世主が本領を発揮する夏になるかもしれない。