「サハリン」に目を向けて 安曇野市の田淵行男記念館で写真家・新田さん個展

安曇野市豊科南穂高の田淵行男記念館は3月29日まで、写真家・新田樹さん(58、東京)の個展「サハリン」を開いている。昆虫や自然に関する写真展が多い同館だが、今回は太平洋戦争後、ロシア領サハリン(旧・樺太)に残された朝鮮民族のその後を捉えた写真に、詳しい文章を添えた社会性の濃い展示になっている。
新田さんは福島県出身。大学卒業後、写真家の半沢克夫さんに師事し、1995年独立。翌年、初めてサハリンを訪れ、ロシア語、朝鮮語が飛び交う中でいまだに日本語も使われていることに驚いたという。「戦中戦後、さまざまなことがあった地に生きながら、それでも日本語を使うことの意味を知りたかった」と新田さん。
2010年から約10年の間に何度も訪れ、5家族ほどと懇意になった。日本統治下の樺太に住み、戦後の混乱やその後のソ連崩壊などの影響で、生まれ故郷の朝鮮半島に戻れない老人たちにカメラを向け、話を聞いた。
22年、写真と文章をまとめて自費出版。翌年はサハリンの写真で、国内の芸術写真分野で登竜門とされる大きな賞を二つ受けた。会場には、その中の26点が並ぶ。
今回、新田さんの個展開催を働きかけたのは写真家の佐藤大史さん(安曇野市)。「今までと違うジャンルも田淵記念館で紹介してほしかった」と言い、昨年末のギャラリートークでも司会役を務めた。
午前9時~午後5時。祝日以外の月曜休館。高校生以上310円。同館TEL0263・72・9964