
日本人の〝心の食べ物〟、おむすび。近年は専門店ができたり、コンビニエンスストアで高級品が出たりして話題になる。梅干しやおかかなど定番に加え、チーズ、カレーなど具も豊富になった。
松本市の松本城近くに専門店「おむすび仁」がオープンした。コメ農家が手がける店で、こだわりのコメを使い、具やのりも厳選。おむすび(おにぎり)なのにほとんど握らずに作る、新感覚の食感だ。
各地でコメが品薄になり価格が高騰した「令和の米騒動」の記憶が鮮明だが、コメ農家ゆえの安定供給が強みだ。「コメのおいしさ、可能性を伝えたい」と話すオーナー、鶴見健仁さん(46)の妻、恵美さん(47)。おむすびの魅力を発信していく。
「松本城」信号から西へ約100㍍の通り沿いに、年明けからオープンしたおむすび専門店「おむすび仁」(大手3)。コメ農家の鶴見健仁さんがオーナーで、同じくコメ農家の原雅貴さん(24)が店長を務める。
「握る」というより「作る」という方がしっくり感じる作り方。しゃもじで白米をすくい、調理台に置き、具を入れるなどして成形し、のりを巻く。
握った場合とは異なるほわっとした食感が、大きな特長だ。オーナーの妻、鶴見恵美さんは「賞味期限は2時間です」。食感を楽しめるタイムリミットのようだ。
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鶴見さん夫妻は松川村で、減農薬・有機肥料でコメ作りをする。田の広さは約1㌶。1回5~6㌧の肥料をまぜ込む土作りに手間はかかるが、「おいしいコメ」作りのためには手を抜かない。
おむすびの具のおかかは、松本市内の専門店から仕入れる。たらこ、サケなどは国産。ブロイラーは安曇野市で育てたもの(加工販売は山梨県)など、具材にもこだわる。のりも研究を重ねて選んだ。現在の作り方は、原店長が4カ月ほどかけてたどり着いたという。
店内のカウンターは木曽ヒノキの一枚板。イートイン利用客に使う、おむすびを載せる皿は、恵美さんの母、明代さん(72)が手作りした。
コメ農家ゆえの安定供給が強み
松本城近くに店舗を構えることになったのは、偶然ともいえる。松本城の南側、外堀大通り(内環状北線)の拡幅工事で、土地の買い上げの結果、鶴見さんの親戚が持つ土地が約60平方㍍と中途半端に余ってしまった。有効活用を考える中で、恵美さんがおむすび店を出すことになった。「付近に専門店は少ない。コメ不足、価格が高いという状況だが、農家なので安定供給ができるのは、強みになる」。コメは原さんと原さんの親戚、宮澤幸司さん(54、安曇野市)、池田町の契約農家からも仕入れることが決まっている。
訪れる人の年齢は幅広い。和食が好きなお年寄りはもちろん、ほぼ無添加なので「子どもにも安心」と購入する若い夫婦もいる。リピーターも増え、多い日には400個近く売れる。
メニューは週替わりで、現在は30種ほどの中から10種を置く。「定番はない」(恵美さん)といい、その時季においしい具材で作る。今後も種類を増やすという。「食べて元気に。おなかいっぱいで、笑顔になってもらえたらうれしい」
観光地なので、外国人観光客の利用も期待できる。コメ、おむすびのおいしさを世界に広げていく。
1個324円か432円。セット(イートイン)、ランチ弁当などもある。午前10時~午後5時(イートインは2時半)。木曜定休。土、日曜は店頭で焼き立て団子の販売も。TEL050・8889・0610。メニューなどはインスタグラムから。