
「得意」生かし信州らしい商品
「香りで地域を思い出してもらえたら」。ふとした瞬間に漂ってきた香りで、忘れていた遠い記憶や、旅先の空気感が一気によみがえる―。そんな経験は誰にもあるのでは?
松本市のデザイン会社「MAG MAG」(県2)、林業会社「柳沢林業」(岡田下岡田)、塩尻市の香や線香の製造会社「明日香」(広丘野村)が共同で、信州らしい土産品として、香「山のもの」と、香を安全に燃やす香立ての販売を始めた。
その地域ならではのきれいな景色や、山や海などの美しい自然は心に残る。「信州を訪れた人が感動する場所を、香りによって思い出し、また来たいと思ってほしい」とMAG MAG代表の菊池伸さん(48)。3社の「得意」を生かした、こだわりあふれる土産品への思いを聞いた。
「松本」と「木曽」唯一無二の香り
松本市観光情報センター(大手3)で9日から販売されている香「山のもの」は、県産の天然精油がベース。24本入りで1本当たり15~20分ほど持つ。2種類あり、煙や灰が出ない優れものだ。
「松本の香り」(1100円)は、国宝・松本城の中に入った時のような、歴史を刻んだ木造建築の重厚感や懐かしさを表現。木曽産ヒノキやアスナロの清涼感に、墨汁や土を思わせるハーブ・パチュリを加えて古さを表現した。古い建築物が残る松本らしい香りだ。
「木曽の香り」(1200円)は、樹木やコケ、葉、湿度の高さなどの自然要素と、整然としながらも森の歴史を感じられる「木曽の森」そのものを思わせる仕上がり。アスナロやヒノキの葉を主役に、オークモスやパチュリで奥行きを出し、森林浴のようにリラックスできる。
MAG MAG代表の菊池伸さんの提案で、明日香の研究室室長の田中侑真さん(39)と共に試行錯誤を重ねた唯一無二の香り。田中さんは「天然精油は香りが優しいので、あえて煙を出さず香りを感じてもらうことに重きを置いた」。煙には拡散力があるが、煙くささもある。
色味や木目異なる一点ものの香立て
香の魅力をさらに引き立てるのが「香立て」だ。既製品や陶器ではなく「信州の木を使いたい」という2人の熱意に、柳沢林業が応えた。ラインアップは、アカマツを丁寧に研磨した柔らかな丸みが特徴の「CORO」と、ケヤキやナラなどの端材を生かした「KAKU」の2種類(各1700円)。樹種によって異なる色味や木目は、一つとして同じものがなく、全てが「一点もの」の表情を持つ。
同社は「小さな木材も余さず活用したい」という考えがあり、5㌢ほどの香立ては、端材に新たな命を吹き込む絶好の機会となった。担当の本間美樹さん(42)は「一つ一つ表情が違うからこそ、自分だけの一点を選ぶ喜びがある。木の物語やその先の山までイメージしてもらえれば」。
商品開発は、市観光情報センターが、取り引きのあったMAG MAGに「新しい土産品を作りたい」と提案したことがきっかけ。代表の菊池さんが、海外向け商品の販売や国内の観光地などを調査した経験から「日本らしいもの」を考え、香の製作に決めた。「長野県の土産品を県内の物で作りたい」と2社に声をかけて実現した。
菊池さんは「香りは記憶を呼び起こす。県外や海外からの観光客が家に帰っても、長野を思い出してもらえたら。山や木、自然などが代え難い長野の財産だと、みんなが再認識する機会にもなってほしい」と話す。
販売場所は今後増やす予定という。