
納得した季節の物を届けたい
朝日村西洗馬にあるビニールハウスの「ひばり家(や)」。戸を開けて中に入ると、カフェのカウンターがあり、花や木の枝、野菜、ジャムなどが並んでいる。さらに奥に進むと、テーブルやベンチ、花壇もある。
ここは、花や野菜の直売所であり、おいしいコーヒーや野菜サンドなどが味わえるカフェであり、貸しスペースとしてワークショップが開かれる場所にもなる。花を出荷する作業場でもあるという。
さまざまな顔を持つこの場所を営むのは、青柳勇樹さん(44)、由香さん(39)夫妻。
「ここまでやることを目指していたわけじゃないのに、いろんな人に出会い、助けられ、自然とこういう形になってきて面白い。この先どうなるのか」という二人に、話を聞いた。
手作り直売所がカフェや教室に
3代続く農家で、葉物野菜や花を栽培してきた青柳勇樹さん、由香さん夫妻。作物の直売店を開き、ゆくゆくは「サラダカフェ」のような形で口に入れるものを提供し、人が気軽に集まれる場所をつくりたいと考え、一昨年から準備してきた。店名「ひばり家」は、レタス畑によく現れる身近な鳥、ヒバリからだ。
畑だった場所にビニールハウスを建てた。内装は、大工を辞めた知人から譲り受けた道具を使い、廃材で壁を張ったり、扉を取り付けたりして全て手作り。かやぶき屋根職人の同級生に壁の一部を作ってもらったり、いろいろな人から家や土蔵にあった物を譲り受けたりしながら、店舗ができた。「斜めになったり曲がったりしている所もたくさんあるけれど、それも味」だ。
昨年4月に花と野菜の直売所としてスタートし、自分たちでコーヒーの入れ方を勉強して、7月にはカフェスペースをオープン。その後出会った村内のコーヒー焙煎士の味にほれ込み、豆の購入を頼むと、「カフェの何たるかを一から全て教えてくれた」という。その「師匠」の元で毎日練習を重ねた。パン店を紹介され、11月末からは、季節の野菜をメインにしたサンドイッチと、師匠からOKをもらったコーヒーの提供を始めた。地元の知人が作るジャムや蜂蜜の委託販売や、ブーケを作るワークショップなどの貸しスペースとしても活用中。二人がやりたい、いろんなことが詰まった場所になった。
来店者と触れ合ううちに「もっと土作りと向き合い、自信を持ってお客さんに(作物を)提供したいし伝えたい、という気持ちが出てきた」という二人。初めは作った物を売る場所として考えていたが、何を、どんな人に届けたいのかと考えるようになってきたという。「日常の中で使ってもらえる敷居の低い場所でいたい。ここで食べた野菜を家でも食べてもらったり、花もプレゼントだけでなく家で飾ったりしてほしい」と願う。
1年近くやってみて、いろいろなことが分かってきた。夏は自然の風が入ってくる気持ち良さを知った。冬には水道が凍って破裂したり、土が凍って扉が開かなくなったりするハプニングがあった。
「季節に逆らわず、合わない時季に無理をして(野菜などを)作りたくない」という思いから、今の時季は花も野菜も少ない。ただ、山で採ってきたり、人に分けてもらったりした枝ものなどを飾る楽しみ方も提案中。今後は何をいつ植えるかという計画や、保存方法などを探りながら、自分たちが納得した季節の物を充実させて、1年間届けることが目標だ。
ハウスのそばに芝生を育てて花を植え、みんなが入ったり子どもが遊んだりできる庭造りも計画中だ。収穫体験ができる畑なども考えているという。「この地形、土壌、風景を使って、いろいろなことをやっていきたい」と話す勇樹さん。この先の形が楽しみだ。