
「いつでも運ぶ」顧客に安心感を
「物を預かって動かす仕事。人も消費も減る中、今後の方向性が難しくなる」。こう語るのは倉庫業・松本倉庫(山形村)の野村順一社長(34)だ。人手不足や倉庫の供給過剰など、業界全体の課題が顕在化する中、若き6代目が、創業70年以上の老舗のかじを取る。
同社の事業の内訳は、預かった荷物の入出庫検品や在庫管理などをする荷役作業と荷物にタグやシールを付けたり、梱包・仕分けをしたりする流通加工が全体の4割。30台以上所有するという自社トラックを使って、原材料を倉庫から工場などに運んだり、県内の16ルートで、包装資材や家電商品などを配送したりする運送部門が5割を占める。
残りの1割は、3、4年前に新規事業として始めた地場産の青果を同社の協力会社が大都市圏のスーパーなどに確保している「産直コーナー」に届ける事業。青果は委託販売だが、売り上げの6割が農家の収入になるという。
「最近、倉庫の利用形態が『消費地保管』の傾向になっている。これに対応していかないと」
現在、地方の倉庫業界が抱える課題という。この消費地の近くに荷物を保管する傾向には二つの要因がある。
一つは、関東、中京圏などの大都市圏で、倉庫の床面積が増え、現在は飽和状態に。これに伴い、大都市圏と地方の価格差が縮まった。
もう一つは、トラックドライバーの労働時間短縮により、物が運べなくなるリスクが高まった「2024年問題」。このリスクを軽減するため、「なるべく消費地に近い場所に保管する」という心理が広がった。
この二つの要因から、価格が多少高くても、「消費地」が多い大都市圏に荷物が集中するようになったという。
この傾向は今後、さらに強まると見ていて、課題解決には、自社も「消費地保管」の顧客を確保。さらに、女性を含めた自社ドライバーの育成を推進して、輸送力を強化する。
「『松本倉庫なら、いつでも運んでくれる』という安心感をつくりたい」と力を込める。
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大学で学んだ後、地元に戻り、松本市内の関連会社の福祉施設で、生産管理などを担当。そのさなか、当時、松本倉庫社長だった父・故俊介さんの大病が発覚、2019年、同社に入社した。
社長に就任して約半年。今でも周囲は年上が多いが、「自分に素直でいて、人の話をよく聞き、いつまでも謙虚でありたい」。若きリーダーの心得だ。
のむら・じゅんいち 1991年、山形村出身。塩尻志学館高卒、京都外国語大で学ぶ。松本市内の関連会社で約5年、勤務。2019年、松本倉庫入社、21年、専務。25年10月、社長就任。