
祖父と父の思い受け継ぎ夢へ
夢の扉を開けた─。
プロのレーシングドライバーを目指す松本市岡田松岡の寺島知毅さん(18)は、トヨタ自動車のプロドライバー養成スクール「TGR―DCレーシングスクール」に合格。5月に開幕する国内大会「FIA(国際自動車連盟)-F4選手権」シリーズに参戦する。
同スクールの選考会には100人近い応募があり、合格者は寺島さんを含め4人という狭き門。過去の卒業生からF1ドライバーを輩出するなど、世界最高峰への登竜門だ。
祖父の正俊さん(76)が中信地方唯一の本格的なカート用サーキットを開場し、父の卓さん(51)がその経営を引き継ぐなど、県内モータースポーツの先駆けとなった一家。系譜を受け継ぐ3代目が、いよいよ世界を目指す。
未知の世界でまずは完走を
寺島知毅さんが挑んだトヨタ自動車のプロドライバー養成スクール「TGR─DCレーシングスクール」の選考会は、2025年5月に始まった。
6月に実車の挙動やサーキットの状況などを忠実に再現するレーシングシミュレーターを使った選考が行われ、8月には実際にフォーミュラカーに乗ってサーキットを走行。10月、さらに本格的なコースで2日間走行し、12月に寺島さんを含む全員が10代後半の合格者4人が決まった。
「合格の知らせが来た時は、本当にうれしかった」と寺島さん。「最後のサーキット走行でタイムが伸びなかったので、自信はなかった。タイムだけでなく、全てを見て判断してくれたと思う」と選考会を振り返る。
寺島さんら合格者は、5月3、4日に富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開幕するFIA─F4選手権(全7大会・14戦)のチャンピオンクラスに参戦する。
同スクールは、四輪モータースポーツの最高峰F1で日本人3人目の表彰台(3着)に立った小林可夢偉さん(39)、元F1ドライバーで、伝統の耐久レース・ルマン24時間で優勝3回の中嶋一貴さん(41)らを輩出した実績がある。
一方で前年の24年の選考会でも合格者が4人いたが、そのうち2人は今年はスクールに残れないなど、厳しい世界でもある。
寺島さんは「未知の世界で、どこまで通用するか分からない」と正直な胸の内を明かした上で、「まずは完走、そして表彰台を目指す。最終目標はチャンピオン」と力を込める。
3歳からカート 高校でプロ意識
寺島さんとモータースポーツとの出合いは、3歳で始めたカート。当初は「遊び感覚」で、女鳥羽中時代は野球に熱中し、部活動が終わった22年秋、初挑戦した全日本カート選手権で5位入賞を果たした。これをきっかけに、松本工業高に進学した時点で「プロのレーシングドライバーを目指す」と意識が変わった。
高校2年時の24年に、全日本カート選手権FP─3部門で6戦5勝してシリーズチャンピオンになり、同世代の国内トップクラスに。3年時は同スクールの選考を受けながら、カートの世界選手権などに出場した。
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寺島さんの祖父・正俊さんは以前、孫の活躍について「人前では『うれしい』と言っているが、内心はとても心配」と、複雑な心境を語ったことがある。モータースポーツが危険と隣り合わせであることを熟知しているからだ。
父の卓さんは「片田舎のサーキットからでも世界を目指せることを知り、多くの子どもたちに夢を持ってもらいたい」と、地元のモータースポーツ文化のさらなる発展につながることを期待する。
祖父の思いと父の夢。3代目はさらに大きな夢を追って今、スタートする。