星座と共演するヒメボタルの光彩(筑北村、千曲市境の冠着山)

撮影すると光跡が金色の粒状に写る“ヒメボタル銀河”。夏の星座と共演し、壮麗神秘な夜を演出した。左上部は大接近中の火星=7月16日、冠着山山頂、ニコンD5、ニコンAF-SED28-70ミリ、70枚多重露光

天と地と蛍 三つの銀河に抱かれて

山深い林の中、真夏の夜の幻のようにひそかに繰り広げられるヒメボタルの光の舞。その幽玄神秘な姿に魅せられこの夏、何度も山に通い、撮影に挑んだ。
場所は「姨捨山」として知られる冠着山(1252メートル)の山頂。筑北村と千曲市にまたがる。7月8~19日の間に7回、同村の鳥居平登山口から夕方に登頂。山頂の冠着神社で般若心経を唱え参拝し、撮影に臨んだ。
「神の化身の光」のように映る、神聖な場所でのヒメボタルの光跡。撮影は毎晩、日付を越えたが、ヒメボタルの発生状況や、強風、霧、雷雨などの気象条件にも左右され、難航した。
無風の16日午後8時25分。「今夜、もしかしたら」の予感が的中し、一斉にあちこちで「ピカッ、ピカッ」と明滅が始まった。金色の宝石を点々とちりばめるように雄のヒメボタルがきらめき舞う。羽が退化して飛べない雌は、草木につかまり発光する。体長わずか7ミリとは思えない、刺激的で魅力的な光彩だ。
折しも大接近中の火星が、大きく赤い姿を見せる。夏の星座を横切る銀河(天の川)も明るい。目の前の幻想的な光の舞は“ヒメボタル銀河”、眼下に広がる善光寺平の夜景はさしずめ“地上の銀河”だ。真夜中の山頂でひとり、三つの銀河に抱かれ、夢世界の時空に浸った。
(丸山祥司)