2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

[創商見聞] No.14 三浦毅(バックステージ社長)

利益より人との出会いに感謝

―創業のきっかけは。
 勤めていた検査機器メーカーが民事再生法の適用を受ける事態に陥り、退職を余儀なくされました。就職活動に苦戦する中、知人に「商工会議所の創業塾(現・創業スクール)に行ってみたら」と勧められ、通ったのがきっかけです。それまで商工会議所は、「簿記検定の受け付けをしているところ」くらいの印象しかなく、いろいろなサポートを行っていて驚きました。
 創業塾には年齢も立場もさまざまな方が通っていて、皆さん真剣でした。当初、自分には就職しか頭になかったので、「創業という生き方もあるのか」と刺激をもらいました。ただ、他の方はやりたいことがあって来ているのに、自分にはそれがなかった。
 何を仕事にしようかと悩む中で、創業塾にパソコンを使えない方たちが多くいることに気付きました。前職では、パソコンを使えるのは当たり前だと思っていましたが、中にはマウスの動かし方が分からないとか、電源の入れ方が分からないという方もいて。使い方を教えると、ものすごく感謝されて「これを仕事にしなよ!」と言ってくださったり。これはパソコンやITに関するニーズがある、仕事にしようと決めました。
 ―事業について。
 現在の柱は2本です。一つは開発、設計なども行う製造業。もう一つはITアドバイザーです。
 ITアドバイザーとしては、中小企業のハードウェアとソフトウェアのシステム管理を請け負っています。大企業では社内に情報システムの管理部門がありますが、中小企業では少しパソコンに詳しい総務の人が兼務していることも珍しくはありません。そこに注目しました。会社に顧問弁護士や顧問税理士がいるように、顧問システム管理者がいるようなイメージです。個人商店から従業員100人を超える企業まで担当させてもらっています。
 私は、ITコンサルタントではなく、ITアドバイザーと名乗っていますが、そこにはこだわりがあります。あくまでも主導はお客さま。お客さまの悩みに対してどうしたら良いのか、教えるのではなく、共に考えていくという姿勢です。今では、ソフトウエアの使い方や来年の予算の策定についてなど、システム管理以外にもさまざまな相談が来ます。
 私はお客さまにとって有益だと思えば、多少厳しくても本当のことを伝えるようにしています。積極的な営業活動はしていないので、仕事をいただく時は人づてに紹介してもらうことが多いです。一つ一つの仕事に親身になって取り組むことが、おのずと営業になっているのかもしれません。
 ―創業後、苦労した点は。
 現在でもそうですが、お客さまの要望に100%応えられなかった時です。お客さまが求めるものと差異が生じてしまった時にどう擦り合わせていくかは、今後も常に課題として考えていきたいです。
 悩みや苦労などはその時々でありましたが、私のように一人で会社をやっていると、なかなか相談する相手がいません。そこで、創業した者にしか分からない不安や寂しさがあるのではないかと思い、商工会議所の声掛けで「ネクストステップ信州」という起業家交流会を代表幹事の立場で立ち上げました。
 起業家交流会といえば聞こえはいいですが、ほとんどが愚痴の言い合いや傷のなめ合いでした(笑)。でもこれがあったから頑張れた。みんな悩むポイントが同じで、「お前もそれで悩んでいたのか。実は俺もだ!」ということが何度もありました。つらい時につらいと言い合える仲間と出会えたことは宝です。
 ―創業を考えている人にメッセージを。
 仕事のやり方は人それぞれだと思います。10人いれば10人違ったやり方があると思います。私が仕事をする上で大切にしていることは、「人とのご縁」です。二十数年前に松本にやって来た時は、知り合いは一人もいませんでしたが、今は会社に一人でいる日がないくらい人と会っています。創業塾やネクストステップ信州のメンバーとは今でも交流がありますし、以前ITセミナーの講師をした際には、後日受講者の方からお仕事の依頼をいただいたこともあります。
 周りから「三浦さんはネットワークがすごいね」と言われることがありますが、決してつくろうと思って活動しているわけではなく、仲間やお客さまにとって何が必要か考えていたら自然に広がっていきました。そしてそれが仕事につながっています。個々の利益だけを考えずに、人との出会いに感謝すること。これからもご縁を大切にしてその輪を広げていきたいと思います。

【みうら・たけし】 株式会社バックステージ代表取締役。京都府宇治市出身。46歳。アーティストマネージメントなど、音楽関係の仕事を経て、松本市へ移住。複数の装置製造メーカーで製造、生産技術、システム管理などを担当し、約10年勤務したのち、会社都合で退職。平成21年にITシステムの導入提案や保守管理を請け負う会社を創業し、現在に至る。