[創商見聞] No.26 河内 雅(エコロペイント 代表)

経営とともに後進の育成も

―創業を決めたのは
 独立する前に勤務していた建設会社で塗装事業部を立ち上げたとき、仲間づくりのためにと、商工会議所の青年部に入りました。メンバーには銀行とか酒蔵とか建設業などいろいろな業種の人たちがいます。その仲間たちから、独立するなら応援するからやってみたらと、背中を押されたのが大きかったですね。
創業するといっても車や道具、何一つないところからのスタートでしたから、まずは銀行員の仲間に相談したり、道具を売っている店の人もいたので、そこから道具をそろえたり、青年部の中で創業に必要なものを一式そろえられました。
また、県の創業支援制度資金を利用する場合、経営計画の作成や意見書の提出が必要で、商工会議所にその指導をしていただき、独立後も経理のことなどいろいろとご指導いただいています。経営については全く分からない状態だったので、本当に助かりました。
―塗装の仕事の魅力は
 仕事に就いたきっかけはすごく単純で、色を塗ると楽しいんじゃないかなという発想です。何か手に職を付けたいという思いもありました。軽い気持ちで始めたんですが、実際にやってみるとすごく面白くて、すごく深い仕事でした。
塗装は目に見えてきれいになっていくのが分かるので、お客さんが必ず喜んでくれて、その気持ちをストレートに伝えてくれるので、とてもやりがいがあります。屋根や壁を塗装すると新築みたいになるんですね。それを見たお客さんが「おかげで、また家が好きになったよ」と言ってくれたこともありました。
最近は、ただきれいに塗るだけではなくて、汚くさびた感じにとか、コケが生えた感じを出すとか、古びた感じにしてとか、そんな依頼もあるんです。塗装でこんなこともできるのという、アートの世界ですね。今後はそちらにも力を入れていきたい。常に勉強ですね。
―創業前の体験が今に生かされている
 創業前、建設会社で任されていた塗装事業部はあまりにも忙しくて、下請けに頼んだことがありました。仕事はきちんとやってくれたけれども、僕という人間を評価して仕事を依頼してくれたお客さんからは「なぜ、おまえが来ないんだ。おまえに仕事を頼んだんだ」と言われて。もっと縮小して、自分で回れるだけの仕事量にしなければいけないのかなと悩みました。
また、そのとき、4人の若いスタッフが下にいました。しかし、技術的なことはどんどん覚えていったんですが、仕事に対する気持ちに僕とのずれがあって、結局うまくいかず、育てられなかったという反省があります。独立は、それらも踏まえて新たな気持ちでのスタートでした。
―今後の事業展開について
 屋根や外壁は大体10年周期で塗り替えます。最近は塗装を始めた頃のお客さんが「また、お願いします」と直接連絡をくれるんです。僕という人間と付き合ってくれていたんだって、すごくうれしかったですね。
塗装は将来性がある、必要とされている仕事です。そして、奥が深くて、面白い。それを若い人たちに伝えていきたいんですが、建設業界そのものが若い人を集めるのに苦慮しています。ホームページなどで発信していくことも必要ですね。
 僕自身、大町に生まれ、大町でずっと暮らしてきました。仕事も9割は地元です。ただ、雪が多い12月から3月ごろまでは塗装の仕事をするのは難しい環境にあることも事実。まずは地元ありきですが、今後は松本などもっと南の地域にも事業展開をしていきたいと考えています。
創業して、それまでは会社に守られてきたのが、今度は自分がスタッフを守らなければならない立場になりました。万が一のときの保障などもしっかりしていかければいけないと思い、体制も整えました。今後は法人化することも考えています。これからは、職人として以上に、経営者としてしっかりやっていかなければならないと思っています。

【かわうち・まさし】 エコロペイント代表。大町市出身。40歳。19歳から塗装の仕事に入る。大町市内の建設会社、塗装会社に勤務。25歳のとき、勤務していた建設会社で塗装事業部を立ち上げる。そこで経営についても学び、2016年、38歳で独立し、エコロペイントを創業。