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[創商見聞] No.31 渡部 啓二 (やさい畑のとんとん代表)

手作りこんにゃく、商談会で販路拡大

―10年前に信州に移住した
 信州の旅館に泊まったとき、そこで出してもらった野菜にとても感動したんです。アスパラガス、小松菜、キャベツ、どれも甘くて、おいしかった。長年、川崎で定食屋をやっていたんですが、自分で育てた野菜で料理が提供できたら楽しいだろうなと思いました。そこで、畑付きの家を探して筑北村に移住。60歳のときです。自宅を改造して、定食屋を開業しました。
―筑北村に来て、大きな出会いがあった
 飲食店を始めて2年目。空いている時間もあったので、何か新商品ができないかと考えていました。そんなとき、村の人が「生芋(こんにゃく芋)でこんにゃくの作り方を教えてあげる」と来てくれたんです。初めて見る生芋は、見た目はグロテスクでごりごりした硬い芋。ところが、こんにゃくにして食べてみると、びっくり。「山の味」というのかな、おいしかった。野菜で何か作れないかと考えていたので、すぐにこんにゃくを作ろうと決めました。
 ただ、生芋ができるまでには3年間かかる上、いざ作ってみると何度も何度も失敗しました。しかし、私は調理人なので、数回くじけても諦めないんです。何がいけなかったのか探究して、次第に失敗する確率は少なくなっていきました。
 さらに、自分で作った野菜を練り込んでこんにゃくに色を付けてみようと考え、始めました。ワサビ菜で作って、初めて成功したときの感動は忘れられないですね。今では、菜の花、トマト、栗など1年を通して四季の野菜で30種類ほどあります。「やさい色の生いもこんにゃく」として13年には国の6次産業化の事業に認定をいただきました。
―商品化して5年。松本商工会議所の商談会がステップアップのきっかけになった
 商品は作ったものの、どうしたら売れるのか全く分かりませんでした。それを教えてくれたのが、松本商工会議所の県産品販路拡大のための逆商談会です。商談会には県内、首都圏などから20~30社のバイヤーさんが集まります。商品を持ってバイヤーさんを回り、売り込むわけです。6年前から毎年、参加してきました。
 最初の商談会はさんざんでしたね。今でこそ商品が見えるパッケージですが、当時は白い紙に包んでいて見えなかった。「包装が全然駄目。これじゃ売れない」と、立て続けに言われました。ただ、救われたのが「研究して直しますから、もう一度会っていただけますか」と食い下がったら「いいよ」と言われたこと。早速アドバイスをもとに手直しをして、連絡をとり、会っていただきました。  
 あるときには、15日の日持ちを1カ月くらいにのばしてほしいとも言われ、研究して実現しました。また、「しょうゆで食べるしかない」と言われたため、塩分を抑え、発酵させることで日持ちを長くした無添加の「やさい発酵ジュレ」開発へと進化させました。「野菜で野菜を食べる」という感じです。
 商談会は、普通なら知り合うこともできないバイヤーさんとお会いでき、販路拡大はもちろん、自分の勘違いに気付く非常に貴重な機会。商談会をきっかけに、数年前から三越伊勢丹など百貨店から販促会への出店などのお話もいただくようになりました。
―新商品が「マンナンデザート 黒酢の力」
 当社の基本の商品の野菜入りこんにゃくを食べやすい大きさにカットし、パックから取り出せば、すぐ食べられるようにしました。「マンナンデザート」と付けたのは、「こんにゃく」では、しょうゆをつけて食べるイメージしか持ってもらえないと思ったから。デザートとすることで食事の前後にとってもらえば、食べ過ぎを防ぐ。野菜の栄養がとれるし、ヘルシーでカロリーも少なく、黒酢ブドウの発酵ジュレで食べてもらうことで、健康のためにもお薦めの商品です。
―今後の展開は
 調理人としての経験や知識は商品開発に非常に役立っています。例えば、練り込んだ野菜の緑色を、無添加で、退色させず1カ月持たせることに成功。これも過去の経験とつなぎ合わせて考えていくと、最後にぱっとつながるんです。畑からそのままお客さんの口に入って、健康のために役立つ。食べて健康になる、食べてよかったと思える商品をこれからも作っていきたいですね。

【わたなべ・けいじ】 川崎市出身。70歳。自分で野菜を育て、料理として提供したいと2008年に筑北村に移住。同年、定食屋「やさい畑のとんとん」を創業。社名の「とんとん」は、まな板で切る「とんとん」という音から付けた。現在は手作りこんにゃくやジュレの製造販売を手掛ける。大町市在住。