梅雨空に甘く香るスイカズラ(池田町会染)

雨が降り出した暮れなずむ林内で香り立ち、ひたすら花をつけては散らすスイカズラ=ニコンD5、ニコンED AF-S ニッコール28-70ミリ、ストロボ、自製フィルター

切ない心模様花風情に重ねて

梅雨空が広がる池田町会染で15日、山際の農道沿いに、ほのかな甘い香りを漂わせて咲くスイカズラの大きな株に出合った。
和名は「吸い葛」と表記されるが、「忍冬(ニンドウ)」と書く別名でよく知られている。スイカズラ科のつる性木本で、学名はロニセラジャポニカ(Lonicerajaponica)。
「吸い葛」は、花の付け根に甘い蜜があり、花を抜いて吸ったことに由来。英名のハニーサックル(Honeysuckle)も同様だ。別名の「忍冬」は、緑の葉を付け冬を耐え忍ぶ辛抱強い生命力から付けられている。
花は白色で咲き始め、次第に黄色へと変色する。白と黄色が混ざる花模様から「金銀花(キンギンカ)」とも。解熱や抗菌作用の漢方薬としても知られる。花言葉は「愛の絆」「献身的な愛」。
撮影しようと満開の花の前に立つと、1985年にリリースされた、因幡晃さんが歌う「忍冬」のサビの歌詞が脳裏に響く。「忍ぶという字は難しい心に刃を乗せるのね」。恋心を見せずに寄り添い、見返りを求めない愛に生きる女心をスイカズラの花風情に重ねている。そんな切ない心模様と甘い香りの雰囲気を写真でどう表現するのか?撮影は、暮れなずむ時刻に3回挑戦。句が浮かんだ。「スイカズラ香りが包む雨を聴く」
(丸山祥司)