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暁の富士山が演じる「日本の夜明け」(塩尻市の高ボッチ高原)

霧氷に覆われた厳寒の高ボッチ高原から眺める荘厳な夜明け=ニコンD5、ニコンEDAF-S ニッコール80~400ミリ、ハーフND 午前6時10分

幽玄で神秘的な光彩のドラマ

塩尻市の高ボッチ高原から富士山を望む冬の夜明けは、幽玄で神秘的な光彩が演じるドラマだ。星空と夜景のコラボから始まり、赤い光が山筋や雲を照らすモルゲンロートを経て、朝日が顔を出すまで、何幕もの多彩なステージを見せる。信州の真ん中から見る「日本の夜明け」にレンズで迫った。
11月30日午前4時半、氷点下9・7度。西の空には、6個の1等星を結んだ「冬のダイヤモンド」(シリウス、プロキオン、ポルックス、カペラ、アルデバラン、リゲル)がきらめく。眼下には諏訪湖周辺の街明かりが宝石をちりばめたように輝いている。天と地の銀河が共演する豪華な舞台が、「プリマ」の富士山の登場を待っている。
午前5時5分。東の地平線上の空がわずかに赤みを帯びてきた。時を追うごとに一段と鮮やかに輝くスカーレット色の空。富士山のシルエットも徐々に濃さを増していく。そして、左右対称に優美な裾野を引く神々しい光景が、朝焼けの中に浮かび上がった。
午前6時10分。凍(い)てつく霧氷が静寂さを際立たせる中、日の出前の群青色の光彩に囲まれた諏訪湖が赤く染まる。太陽の暖色と大地の寒色の見事な共演だ。
万葉の昔から歌に詠まれ、描かれてきた霊峰・富士山。富嶽(ふがく)三十六景で知られる葛飾北斎がこの光景を目にしたら、どんな浮世絵を残しただろうか?
(丸山祥司)