[創商見聞] No.48 千野 真二(マルキタ家具)

―仕事と並行しながら資格取得の勉強に励んだ
 スキーインストラクターから〝別世界〟の職人の世界に飛び込みました。当時は建設業の一環で家具を製作していくことが主な業務でした。しかし現場では、飛び交う言葉が専門的すぎて全く分からなくて大変でした。このため、大町市の職業訓練校の木造建築科に3年通いました。そこで昼間の仕事を終えた後、勉強。苦節5回のチャレンジの末2級建築士の資格を取得し、また、インテリアコーディネーターの資格も取得しました。資格を取得したことで建築の仕事に大きなプラス要素になりました。主任技術者になる機会が多いのですが、2級建築士だと書類申請にも役立ち、仕事がスムーズになりました。
―兄弟での役割は
 僕より前に家業についた兄はずっと職人で家具製作に努力しています。社長ですが職人として「常に研究」しています。自分は営業で外商やデザイン、設計を担当し、分業でやってきました。このスタイルは合理的だと感じています。
―商工会議所との出合いは
 「大町流鏑馬(やぶさめ)太鼓」に入っており、会議所とはその市民活動からの付き合いがあり長いです。
 建物の経年劣化や道路拡幅のこともあり、昨年店舗を新築しました。その時、小規模事業者持続化補助金の話が商工会議所からあり、相談に乗ってもらいました。
  店の壁面看板を作るに当たり50万円の補助を受けました。そこで申請書類を作成したのですが、会社を見直す良い機会でした。
 「常に研究・常に鍛錬・常に発信」と企業理念も初めてつくりました。それまでは、いわゆる家族会社でしたし、正直そういう概念も無かったですね。
 若い社員(職人)に伝えたい思い、インテリアへの心構え、最新の情報へアンテナを広げる重要性を考慮し、自分自身にも反映しています。現在2人の社員がいて、2級家具製作技能士の資格を持ち、積極的に取り組んでもらっています。
―ロードサイドサインの実際の効果は
 「職人魂で提案力のあるJAPANメイドを!訴求力ある広告展開」。これが補助事業計画書の正式名です。白馬村に隣接している関係で、年々外国人によるインバウンド関連の需要が増え、同村の不動産取引が近年多いです。オーストラリア、マレーシア、中国と、さまざまな国の富裕層を相手にすることが増えてきています。
 外国人のお客さんは物件を購入する時に一括してリフォームされるのですが、(マルキタの)英語の看板を見て、入店し商談される方が結構います。
 日本人と異なり、ラミネート加工を嫌がります。「フェイクウッドは嫌だ」とはっきり話し、木目調を嫌います。
 実際に見て触って「この木が良い」とオーダーしてキッチンなどの製作を依頼してくるケースが多いですね。新型コロナウイルスの感染拡大という不安要素はありますが、外国人の飛び込みでの来店客が目立つようになってきました。店舗の英語の看板が営業マンの代わりになってくれています。
―受け継ぎ始めたときからを振り返って
 父から「昔は家具を置いておけば売れた。トラック満載でよく婚礼家具を運送した」と聞きました。しかし、長野冬季オリンピック後から景気は下降線でした。多様化するニーズに対応できず赤字が何年か続きました。
 まだ家具業界自体厳しいのですが、製作の強みを生かし、兄弟で本腰を入れ営業展開しました。何でもないところに飛び込んで営業したこともありました。何とか生き残り現在は年商も一定水準を確保しています。
 発信するショールームとして店舗も看板も新装し、ハードウエアは充実しました。今後は、ソフトウエアをさらに充実させていきたいです。
―今後について
 建設業者の下請け業務を主とした体制から徐々に脱却し(経営が)安定できました。白馬村のインバウンド関連のほか、最近では大町市内のホテルや飲料メーカーの新工場設立など建設業には好材料はあるのですが、コロナ禍の影響は大きいと思います。
  今後、建設業界がどのように推移していくか分かりませんが、半年後くらいに響いてくるかもしれません。しかし、研究と鍛錬を繰り返し、販路開拓を進め発信していきたいです。

【ちの・しんじ】 46歳、大町市出身。高校卒業後、鹿島槍スキー場のスキーインストラクターを経て、1995年マルキタ家具に入社。2003年インテリアコーディネーター、2006年2級建築士の資格を取得。2019年、兄の北澤幸一氏と父親の事業を継承し、北澤氏の社長就任とともに現職就任。

有限会社 マルキタ家具                         大町市俵町1548(若一王子神社入り口)                 ☎0261‐22‐1529