【像えとせとら】開運堂本店 エーゲ海に捧ぐ (松本市中央2)

店と一体感10頭身の看板娘

1884年創業の老舗菓子店の店内中央に立つ、ブロンズの裸婦像。水戸市出身の彫刻家、木内克(きのうちよし)(1892~1977年)が72年に制作した晩年の代表作で、77年に先代社長が購入した。40年余にわたりお客を迎えてきた“看板娘”だ。
ロマンチックなタイトルに、10頭身以上かという抜群のスタイル。腰まであるウエーブのかかった長い髪をなびかせ、腕を後ろに回して胸を強調する。きゃしゃに見えるが、細いウエストから「ばんっ」と横に張った腰は、女性の色気とともに母性も感じさせる。
高さが2・3メートルあり、台座も含めると見上げる大きさ。全国の美術館などが同じ作品を所蔵しているが、その大きさゆえに、ほとんどが屋外に展示されているという。同店は97年、現在の店舗に建て替えたが、渡邉公志郎社長(78)は「その時に外に出すことも考えた。どこに置くかが悩みの種だった」と明かす。
それなのに店内ではなぜか目立たず、訪れる客で目に留めるのは100人中1、2人という。「たまに子どもが『ぽかーん』と見上げている。これほど大きい像に気付かないのは、それだけ店になじんでいるからでは」と渡邉社長。
老舗の落ち着いた雰囲気にマッチした芸術作品だが、渡邉社長は「そもそも看板娘が裸でいいものかね?」と苦笑い。