【小林千寿・碁縁旅人】#30 日本のウイスキー

エジンバラのウイスキーミュージアムを見学する筆者(2014年3月)

先頃、アメリカ・ニューヨークで競売にかけられたサントリーのシングルモルトウイスキー「山崎55年」が、60万ドル(約8100万円)で落札されました。2020年に1本330万円で販売された時から話題のウイスキーです。
14年3月に英国囲碁協会の要請で、欧州子供囲碁大会の審判でスコットランド・エジンバラへ赴いた折に、社会勉強としてウイスキーミュージアムに見学に行きました。
ウイスキーの歴史、造り方のレクチャーを聞き、膨大なコレクション・ルームを見た後は種類の違うウイスキーの利き酒タイム。ウイスキー派の方には至福の時になるはずです。
さて日本のウイスキーが世界5大ウイスキーと言われるようになったきっかけは、01年の品評会「ベスト・オブ・ザ・ベスト」で、ニッカウイスキーの「シングルカスク余市10年」が総合1位に、サントリーの「響21年」が2位になったことです。
バブル崩壊でウイスキー業界も余波を受け、生産量を減らして耐えていた頃です。
その後、ハイボールの流行、14年の朝ドラの「マッサン」などでウイスキー業界が元気になります。
04年から15年まで欧州と東京を拠点に往復していた私は、日本からのお土産として羽田、成田国際空港の免税店でウイスキーを購入していました。
親しくしていたパリ在住のロシアのピアニストは、響21年より17年が好みでした。そしてわが家に、渡し損ねたウイスキーが数本、まだ眠っています。今、ネットで検索すると高値過ぎて、どう扱ったらよいのか困ります。
これほどまで人気が出ると、純粋にウイスキーを飲みたい方々には迷惑な状況でしょう。
でも世界で評価される日本のウイスキーがあることは嬉(うれ)しく、これに続き日本酒も世界中で好評で、酒処(さけどころ)の信州が注目を集める日も近いと思います。
(日本棋院・棋士六段、松本市出身)