【野遊びのススメ】#31 烏川渓谷緑地で初夏の昆虫観察

自然の仕組み学ぶ虫探し

いよいよ夏本番。虫好きの子どもたちには居ても立ってもいられない季節だ。わが家の長男(小学5年)もそんな1人で、次男(同1年)と共に今年、田淵行男記念館(安曇野市豊科南穂高)と友の会が共催する「むしの会」に入会した。6月中旬に行われた初夏の昆虫観察に参加した。

2時間で60種楽しみ方もさまざま

観察場所は、烏川渓谷緑地水辺エリア(同市堀金烏川)。午前9時、車を止めて外に出ると、爽やかなエゾハルゼミの鳴き声と川の音に包まれた。案内してくれるのは、同館館長でむしの会会長の中田信好さん(61)と学芸員、友の会員。親子や孫を連れた祖父母ら29人が参加した。
マムシやハチなどへの注意を聞いて歩き出す。子どもたちは次々と小さな虫を見つけ、「先生!これ何ですか?」と質問攻め。水を得た魚のように虫を探す長男も、葉の上にいる虫の名前を聞いている。
鳥のふんにしか見えないが、つつくとのそっと動いた。生きている!「ホソアナアキゾウムシだよ」と中田さん。見つけても素通りしてしまいそう。ちょっと感心した。
くるくると走り回るように探す子、1匹の虫をじっくり観察する子、写真を撮る子、図鑑で調べる子などみんなさまざま。一方、虫を見つけられず、すね気味だった次男は、中田さんが野帳(記録ノート)に書く姿を見て「俺も虫の名前書く!」と言い、覚えたてのひらがなで書き留める。
記録係の役目を見つけて張り切る姿に、自然の中で自分なりの楽しみ方を見つければいいんだと感じた。
道すがら、触るとかぶれるツタウルシなどの植物も解説する中田さん。無数に落ちているキリの花を見つけ、「数えるのはキリがないからやめましょう」とおやじギャグを飛ばす。トラガの産卵やヤマトシリアゲの交尾など貴重な瞬間にも出合え、気づけばお昼近く。2時間ほどで見つけた昆虫は60種にのぼった。
中田さんは「自然の楽しみ方は多様。昆虫は一番身近な存在で、数も種類も多く、生態はバラエティーに富む。捕っちゃ駄目、飼うのはかわいそうなどと言わず、昆虫に触れて自然の仕組みや大切さを学んでほしい」と話した。
家の中に虫がいると絶叫する私も、毎年虫捕りに付き合っていると、ユニークな形、幾何学的な模様、メタリックな輝きなど、へぇ~と驚くことがたくさんある。親子で苦労して目当ての虫を見つけたときの喜びも格別だ。

【むしの会】山岳写真家・昆虫生態研究家の田淵行男(1905~89年)の自然を愛する心を、次代を担う子どもたちに受け継いでいこうと95年に発足。安曇野市近郊で月1回、自然観察を行っている。問い合わせは田淵行男記念館TEL0263・72・9964

【昆虫観察・採集時の注意点】服装は長袖・長ズボン。ハチが寄ってくる黒っぽいものは避ける。少人数で歩くときはクマよけの鈴を携帯し、ヘビがいたら距離を置いて観察する。苦手な生き物も拒絶して終わりではなく、観察して、帰宅したら図鑑などで生態を調べてみる。マダニに注意し、かまれていることに気づいたら自分で取らずすぐ病院へ。帰宅したら着替えと全身をチェックする。