先人たちが愛でてきた姿
12月8日、塩尻市洗馬岩垂の農道から1200ミリの超望遠レンズで撮影した昇った満月に、今年の干支(えと)である「卯(う)」─ウサギの模様がくっきりと浮かび上がった。
月面の暗い部分の模様は「海」と呼ばれ、それぞれ名前が付けられている。先人たちは、昇り沈むまでの月模様にイメージを膨らませ、さまざまな姿に見立て愛(め)でてきた。神話や伝説、伝承文化の違いで世界各地の見立て方が興味深い。
日本では昇ったばかりの月模様を「うさぎの餅つき」と呼ぶ=図参照。長い耳をかたどるのは、豊穣(ほうじょう)の海と神(み)酒(き)の海。静かの海が顔、晴れの海と雨の海が胴体で、雲の海と湿りの海を臼に見立てている。
世界各地の見立て方を見ると、人や動物の姿など多彩で驚く。白い陸(高地)模様を「女性の横顔」に。海の模様は「バケツを運ぶ少女」や「本を読むおばあさん」も。「菩(ぼ)提(だい)樹の根元に杖(つえ)を持って座るおじいさん」は難解だ。
動物は「大きなはさみのカニ」や「立ち上がるライオン」、「ワニ」や「ロバ」にも見立てている。
1969(昭和44)年7月20日、米国のアポロ11号が人類史上初の有人月面着陸をしてからも、見上げると癒やしと感動を与えてくれる月。新年最初の満月は7日である。
(丸山祥司)