【ビジネスの明日】#50 Search Space(サーチスペース)社長 後藤良輔さん

AIと「協力」社会に役立てて

「社会課題を解決するなど、人の役に立つ仕事がしたかった」。こう力を込めるのは、AI(人工知能)ソフトウエア開発を手がけるSearchSpace(松本市大手3)社長の後藤良輔さん(47)だ。今はAIと「協力」して仕事をする時代という。
医療分野では、エックス線写真から骨折や骨粗しょう症などの判断をする他、CT(コンピューター断層撮影)などの画像を3次元に立体化。医師がより有効な手術法や治療法を探る手がかりにする。
土木分野では、ダムの「壁」や電線などを地下に埋設するための管路の写真から、重大な事故につながるような異常がないかを判断する。
「AIが人間より絶対的に優れている点は『疲れ知らず』。人間の疲れによる見落としや判断ミスなどを防いでくれるのがAIです」と説明する。
今後、ドローンを使った防災・減災関連の事業化も視野に入れる。
例えば、ドローンで、松本市の中心市街地の写真を事前に撮影。大地震などが起きた際に再び撮影。事前撮影した平時の写真と比べて被害の場所や程度を瞬時に判断。適切な支援物資の輸送や避難所開設などに役立てる。
また、同じように写真撮影した場所で土砂崩れが発生した場合、被害の規模などを判断。復旧までに要する時間や作業工程などを割り出す。

福島県出身。大学中退後、都内のソフトウエア開発会社で、技術者として働くだけでなく、企画やデザインなどにも携わった。
2011年、より良い子育て環境を求めながら、「いずれは故郷に帰るつもり」で松本に移住。フリーランスの立場で、ソフトウエア開発などの仕事を継続した。
しかし、実力と自信が身に付く中で、「お客さんの意向を酌んだ物作りから、自分の思い通りの製品を作って、困っている人たちの役に立ちたかった」と、Search Spaceを創業した。
現在、同社のオフィスは松本市のコワーキングスペース「33GAKU(サザンガク)」内にある。周囲には起業家も多く、そうした人たちと交流することで、刺激を受けるとともに、「人脈」が充実してきているという。
「いろんな人たちと話をしながら、社会に役立つ製品を作っていきたい」。これからの人間とAIとの関わり方を示唆するように言った。

【プロフィル】
ごとう・りょうすけ1975年、福島県出身。早稲田大理工学部中退。都内のソフトウエア開発会社に就職。2011年、松本市に移住し、フリーランスに。19年、Search Spaceを創業し、社長就任。松本市沢村在住。