【ビジネスの明日】#56 Thank you Hippopotamus Hostel代表・又吉英良さん

逆風しのぎ事業の展開に力

「再び、コロナ禍のような事態になっても、持ちこたえられる準備はしておきたい」。こう話すのは松本市内でゲストハウス2棟を運営する「Thank you Hippopotamus Hostel(サンキュー ヒポポタマス ホステル)」(城西2)の又吉英良代表(34)だ。来月、会社の法人化を予定している。
2棟のゲストハウスはいずれも中心市街地にあり、1号店(城西2)は部屋から松本城が見え、2号店(中央1)は、駅から近い立地がセールスポイントだ。
外国人旅行者を中心に人気があったが、コロナ禍で、2020年4月から、22年9月ごろまでは、「ほとんど需要がなかった」。
こうした状況を乗り切るために始めた革製品の製造、販売も軌道に乗らず、頭を悩ませていた時にひらめいたのが、ゲストハウスの「1棟貸し」。
「感染予防対策としてはこれ以上のものはなく、室内の広さと値段とのバランスも良く、ファミリー層に受けた」とし、コロナ禍の逆風をしのぐ手段としては最善策になったという。
外国人の入国制限が解除された22年10月以降は、徐々に客足が戻り、来月まではシンガポールやオーストラリアなどからのスキー客で予約が入り、松本城の桜が咲き、上高地が山開きをする4月以降の「ハイシーズン」に向け、例年以上に期待を膨らませている。

都内の大学卒業後、バックパッカーとしてユーラシア大陸を中心に約30カ国を旅した。北アルプスの山小屋で働いていたこともあるなど、松本にはなじみがあり、訪れた際に定宿にしていたのが、現在自身が運営しているゲストハウスの1号店。18年の春に経営を引き継いだ。
「松本は東京、名古屋、大阪といった大都市圏からの交通の便が良く、外国人からの人気も高い。商売をするには向いている場所」とする一方、松本に暮らし始めてから、自身の長年の悩みだったアトピー性皮膚炎が改善。「空気、水、湿度などさまざまな自然環境が自分に合っていた。ここで暮らすしかない」とも。
今後の展開として、自家用車に相乗りする外国人旅行者向けの「ライドシェア」事業や体験型観光などにも着目しているほか、段階を踏んで本格的なホテル業も視野に入れている。
「ここで働く人の待遇を良くしていくことが一番の目標。それは松本を元気にすることにもつながる」と力を込める。

【プロフィル】
またよし・えいりょう1989年、神奈川県出身。大学卒業後、バックパッカーとして世界を巡る旅に。2018年、Thank you Hippopotamus Hostelの1号店をオープンし、代表就任。