【ビジネスの明日】#54 Sunday Graphics社長・関郁美さん

本業ぶれずに事業展開に挑む

「コロナ禍で大打撃を受けた仕事だが、デザインの力は今も信じています」。そう力を込めるのは広告制作などを手がけるSunday Graphics(サンデー・グラフィックス=松本市中央4)の関郁美社長(57)だ。荒波を乗り切るため、エステ業界にも進出したが、「本業がしっかりしないと、全て駄目になる」と、信念にぶれはない。
あいさつで交換した名刺。一般的な名刺の4、5枚分はありそうな厚紙で、表裏の色が違う。名前や住所などの文字は「活版印刷」といい、指でなぞるとでこぼこが分かり、趣がある。
「分厚いから『かるた名刺』とか言われる。仕事をするうえで、雑談はとても大事。名刺1枚でそれが弾みます」。自身が信じる「デザイン力」の一端だ。
創業以降、業績は右肩上がりだったが、少し陰りが見えた2020年、コロナ禍に襲われた。「これまでも、一番の取引先の仕事が突然、なくなったことはあったが、代わりがあった。コロナはそれもなくなった」。知り合いなどに「何か仕事はないか」と、頭を下げて回った。初めての体験だった。
21年3月、「広告以外の新たな収入源を」と、長野市に「セルフエステ」の店をオープン。場所的に遠く、自身の目が行き届かなかったことに加え、若手スタッフの教育などがうまくいかず22年12月に閉店。しかし、同年3月に開いていた松本店は、長野店の教訓も生かされ、現在は軌道に乗り、今後の新たな展開も視野に入れている。
それでも本業は、本業だ。「コロナの約3年で、『広告を出さなくてもやっていける』と思うようになった企業もあり、完全には元には戻らない」と、覚悟したうえで、「デザインには企業力や社員のモチベーションをアップさせる力がある。その力はこれからもなくならないはず」と、自らにも言い聞かせ、プロが作ったチラシやウェブサイトの効力、信頼性の向上などについて力説した。
今後、自身が8年前にスタートさせた松本駅前の飲食店を飲み歩くイベント「まつもと城町バル」を外国人観光客向けの企画に活用したり、都内の企業とタッグを組んで、ペット事業に進出したりなど、広告業を柱に据えた、新たな事業展開も考えている。
「やりたいことがあり過ぎるが、それらを通して、『デザイン経営』を目指したい」。バイタリティーにあふれている。

【プロフィル】
せき・いくみ 1965年、穂高町(現安曇野市穂高)出身。地元の短大卒業後、自動車販売会社に就職し、営業担当。29歳の時に販促プロモーションの会社に転職。デザイン会社を経て、2008年、Sunday Graphicsを創業し社長就任。松本市在住。