【ビジネスの明日】#25 アトリエ・エムフォオ社長 前田大作さん

ギャラリー開設木工に誇り

木製品製造、販売のアトリエ・エムフォオ(松本市入山辺)はこのほど、同市大手2にギャラリーを開設した。「自分たちの作ったものをちゃんと見てもらい、世界観を感じてほしい」と、同社の前田大作社長(45)。木工芸を後世に残すために、経済活動としての「手仕事」の実現に向け力を入れる。
開設したギャラリー「木藝(もくげい)m4gallery」の広さは約30平方メートル。キッチン、ダイニングテーブルなど大型家具のほか、皿、箸置き、カッティングボードなど小物も並ぶ。「実際の家に置いたときにどういう空間になるかを知るにはちょうどいい広さ」と説明する。
インターネットを使うなど、販売方法はほかにもあるが、実店舗を出した理由について「本物を見てもらわないと、手仕事の質感、匂いなどは伝わらない」とし、「ショーウインドーを見た学生がいつか『あそこにあんな家具があったな』と思い出してもらえたら」と期待する。

神奈川県鎌倉市出身。父純一さん(73)は指物師で前田木藝工房の3代目。1984年に一家で松本市に移住し、大作さんは大学卒業後、家具メーカーに就職。24歳のときに純一さんの下で木工の道を志した。
「技は見て盗め」など、徒弟関係が色濃く残る職人の世界で、純一さんは「分かりやすく言葉で教えてくれた」というが、一日中、木くずにまみれてしゃにむに働くことに徐々に疑問を抱いた。
「自分が素晴らしいと信じている物作りの仕事を社会の中で継続させなければ」。2007年、前田木藝工房の4代目であると同時に、アトリエ・エムフォオを設立し、社長に就任。社員(職人)も雇った。
「給料はちゃんと払うし、状況が良ければボーナスも出す。安心して木工に専念できる環境を整えたかった」と振り返る。
自分の作った「物」を「作品」と呼ぶか、「商品」と呼ぶかは今でも迷いはあり、「『木製品』が一番、しっくりくる」と笑顔。かつては、地元産のカラマツの使用を声高に主張もしたが「それはもう当たり前のこと」とし、「与えられた材料で、最高に美しいものを作るだけ」。木工作家の誇りを見せた。