【ビジネスの明日】#05 広丘自動車研究所社長 上原一光さん

地域に根差しバイクの魅力を

6600平方メートルの広大な敷地に200台もの大型バイクがずらりと並ぶ、巨大なショールームが目を引く。広丘自動車研究所(塩尻市広丘野村)は、1969年の創業から、今年で50年の節目を迎えた。
先代の故上原一訓さんが、トヨタ自動車で車のデザイナーとして働いた後、同社を創立。当初は「自分の好きな車を集めて売る」店だったが、80年代のバイクブームに乗り、バイク事業に転換。81年に全国で8番目の「ハーレーダビッドソン」の正規ディーラーとなり、現在はハーレーの他、「BMW」「ドゥカティ」など輸入バイクを中心に、ウエアやパーツなど関連商品も含め、14ブランドを取り扱う。
かつてのバイクブームは去り、さらに「1円でも安く」を求める消費者のネット購入の増加などで、「最盛期に比べるとバイクの売上高は10分の1」。「この時代に、売り上げを増やそうというのはナンセンス。利益率を上げていかなければ」と、整備修理などのサービスや特注で部品を装備するカスタムに注力する。近く、県内ではまだ珍しい、バイクの性能を計測し、乗り手にとって最適な状態に仕上げる「ダイノマシン」を2000万円ほどかけて導入予定だ。
一方、「バイクの魅力、世界にはまってもらうことが大事」と、バイクの楽しさや走る喜びを伝えるイベントの企画も重視。塩尻市内のハウスメーカーとタイアップし、モデルハウス内にバイクを置いて「家にバイクがある生活」を提案したり、年2回大規模に開催する顧客対象のツーリングでは、より付加価値の高いサービスで楽しんでもらったりと、アイデアを凝らす。
また、自動車の免許で乗ることのできる三輪の「トライク」や電気バイク、冬のツーリングに適した「発熱するウエア」など、ハイテクかつユニークな商品も幅広く扱い「バイク屋」として「オンリーワン」を目指す。
長野県は全国的にも大型二輪の免許保有率が高く、「50年間地域に根差す店は珍しいから、三世代にわたって購入してくれるお客もいる」と老舗ならではの強みもある。
「バイクの楽しさ、乗る喜びは、乗ればわかる」。上原さんは経営戦略に頭を巡らせつつも、トレードマークの作業着姿で接客や整備まできめ細やかに対応し、バイクの魅力を一線で伝えている。

【プロフィル】
うえはら・かずみつ 松本市出身。米国アリゾナ州の工科系短大を首席で卒業後、26歳の時に父・一訓さんが設立した広丘自動車研究所に入社。2010年、社長に就任。48歳。松本市神林。
(佐竹伸子)