【ビジネスの明日】#59 莉楽代表・百瀬妙子さん

女性目線でプロの役割果たす

「これまで住宅設計などに携わってきた多くの経験が今の土台です」。そう語るのは建築事務所、莉楽(りら)(安曇野市三郷温)代表の百瀬妙子さん(49)だ。独立して約4年。これからは「女性目線」を前面に出した会社を目指すという。
建築関係の専門学校を卒業後、20歳で建築事務所に就職。以降、現在まで、建築設計の道一筋。この間、携わった建物は300軒以上で、「図面を製作しながら、完成後の間取りなどが、頭の中で描ける。そうなると、仕事も早くなります」と胸を張る。
その経験から得た仕事の流儀が「自分のこだわりを出さないのが、こだわり」だ。
家を建てるのはその人の人生の中で一番大きな買い物の一つで、そこにはその人のこだわりがある。そのこだわりにできるだけ寄り添うのが百瀬流。
「プロから見て『こうしたらいいのに』と思うことも、自分なりに消化しながら、お客さんの要望を実現させるのがプロ。自分だけが満足しても意味がない」と誇りを見せ、「『百瀬さんにやってもらってよかった』の言葉に支えられてここまできた」と話す。
その考えを礎に、独立を決意したのは自分がやりたいことが明確になったから。それは、空き家などのリフォームと、家の新築や改築などを自分自身でやる「DIY」の商品化。そして、長い間、「男社会」の中で働いてきたからこそできる「女性目線」の営業だ。
空き家のリフォームなどは、今後の少子高齢化社会を見据えれば、空き家が増えることは確実で、再利用する需要も確実に増すと踏む。
DIYは最近のトレンドを受け、プロと素人の役割分担をはっきりとさせた上で、家を改築する場合、それに必要な道具、材料やパースなどをパッケージして商品化。完成までのアドバイスもする。
女性目線は、2年前に知り合い、現在、同社社員として働く青野ひとみさん(63)とタッグを組む。青野さんは1級造園施工管理技士の資格を持っており、「建物は私が、庭など外構のことは青野さんが担当すれば、全てをカバーできる。これらを女性が前面に立ってやれば、目新しさもあり、女性客も相談しやすいのでは」と期待する。
独立前は裏方に徹してきたが、自分の「城」を構えた以上、会社の顔になる必要がある。「そろそろ前に出ないと」。本当の百瀬流を確立するのはこれからだ。

【プロフィル】
ももせ・たえこ 1974年、諏訪市出身。田川高から、東京工学院専門校(東京都)に進む。都内の設計事務所に約3年勤務。松本へ戻り、ハウスメーカーや工務店などで20年以上働き、2020年に独立、莉楽を設立し代表就任。