【ビジネスの明日】#53 マグナ社長 澤渡五郎さん

第二の故郷で営業基盤強化

「ビジネス的に東海、北陸地区の強化という側面もあるが、第二の故郷に『錦を飾る』という意識もある」。こう語るのは磁石製品などの製造・販売を手がけるマグナ(東京都)の澤渡五郎社長(57)だ。9月から、信州松本営業所を松本市深志2に移転し、「支店」に格上げ。月の半分は同支店で業務に当たるなど、「松本人」としての生活もスタートしている。
「磁石業界トップ」という約2千品目の品ぞろえを自負する同社。ホワイトボードや冷蔵庫などに張る「カラーマグネット」から、センサーやスイッチなど、電子部品として使われるものなど、種類は多種多様。
主力商品(工業系のカタログ販売会社への卸)の全体の売り上げに占める割合が約1割ということからも、「多品目勝負」という実態がうかがわれる。
取引先の企業の業種もさまざまで、「形状や強度など、あらゆる要望に応えなければならず、それもこの多品目につながっている」とする。一方、「(取引先が)特定の業種に限られないので、売り上げの増減の波が小さい。安定しているのが特長」と話す。
父で、現会長の要さん(88)が、磁石製造会社から独立して1984年に創業。現在、製品のほとんどを中国で製造しており、「今の『チャイナリスク』は懸念材料だが、先代が築いてくれた中国との太いパイプと信頼関係はありがたい」と感謝する。

産声を上げたのは母の実家のある豊科町(現安曇野市豊科)。祖父母にかわいがられ、子どもの頃から、長期休暇などの際には、安曇野で遊び、大学生になっても「白馬でスキーをして、温泉に入り、祖父母に会いに行っていた」という。
ビジネス的にも長野県の取引先が多く、交通の利便性も良かったことから、2019年に「信州松本営業所」を開設。9月1日に、同営業所を「支店」に改称、社員7人体制でスタートし、営業基盤の強化を図る。
同時に自身も、生活の拠点を松本と東京で半々にし、今まで以上に松本に「なじむ」つもりだ。
今後の会社経営について「売上をいきなり、今の2倍、3倍にしようとは思わない」と強調。伊那食品工業(伊那市)の塚越寛最高顧問の著書「年輪経営」の題名を「好きな言葉」とし、「社員教育や売上などを含めた会社全体のレベルも、年輪のように少しずつ成長させられたら」と話す。

【プロフィル】
さわど・ごろう 1965年、東京都出身。駒沢大経済学部卒。都内の電子部品の商社に約4年間勤務後、92年4月にマグナに入社し、営業担当。2018年、社長に就任。