【ビジネスの明日】#06 コニファープラン社長 竹淵雅樹さん

遊び心込めた「秘密基地」人気

ログハウスにトレーラーハウス、100年以上前に建てられた土蔵―。個性あふれる建物を1カ所にまとめ、総称は「L-BASE(エル・ベース)」。松本市寿北6の複合レンタルスペース「淵庵(ふちあん)村」内にある宿泊施設だ。淵庵村を運営するコニファープラン(同)の社長、竹淵雅樹さん(34)が遊び心を込めてつくった「秘密基地」が、ここ数年人気を呼び、売り上げを伸ばしている。
「淵庵村」は元々、竹淵さんの自宅で、広さ約1650平方メートル。L - BASEの建物は昨年オープンしたクライミングウオールなども備えたシークレットベースを加えた4種類。ログハウス以外にはキッチンが付いており、自由に使うことができる。料金も1棟当たりに設定されており、時間貸しもする。
村内にはL - BASE以外にも、時間貸しする多目的ホールや茶室も備え、屋外では6分の1スケールのミニ列車が走行し、ハーブ園や藤棚がある庭ではバーベキューや結婚式もできる。
こうした開放的な雰囲気が受け、昨年の稼働率は宿泊と時間貸しを合わせ、約60%だが、外国人旅行者を中心にリピーターが多く、週末や長期休暇などは満室状態。2012年の開業から数年は赤字だったが、16年には前年比2倍以上の売り上げとなり黒字転換。以後、順調に売り上げを伸ばしている。
また、同社は東京の大田区と世田谷区にある2棟の自社ビルで個人向けのレンタルオフィス合計125室を経営。大田区の現在の稼働率は92・3%、世田谷区は満室になっており、会社全体の業績を下支えしている。

竹淵社長は大学卒業後に入社した電気機器メーカーを3年で退社。英語を身に付けるなどの目的で11年1月にオーストラリアに移り住んだ。現地では「ホテル業に就きたい」という夢を持ち働いていたが、その年の6月、県中部地震で実家が被災したのをきっかけに12年1月に帰国した。
母親が経営していた不動産会社に入社。一時避難場所の予定で購入したトレーラーハウスや地震で外壁が崩れた土蔵の新たな利用法を模索する中で、貸しスペースにすることを思いつき、その年に「淵庵村」を開いた。
当初は、集客できずに赤字が続いた。海外への未練もあった。そうした苦しい状況の中、そのころ訪日外国人が増えてきたことに着目。「貸しスペースを宿泊施設にして外国人を呼ぼう」と14年、現在の業態に転換した。
得意の英語を生かし、外国人向けのサイトを作ったり、民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」に登録したりすると徐々に外国人旅行者の利用が増えた。「口コミの評判を地道に積み上げた結果」と竹淵さん。
現在では「淵庵村スタイル」が地元の人たちにも好評で、遠方の友人との松本での宿泊やママ友の集まりなどに使われるようになり、日本人の利用は全体の約4割まで伸びた。
竹淵さんは「7部屋しかない希少感と部屋の特徴付けが人気の秘密」とし、「43歳までにアジアのリゾート地などに進出したい」と意欲を見せる。

【プロフィル】たけぶち・まさき松本市出身。2007年、大学卒業後、大手電気機器メーカーに就職し、技術開発職として働く。10年退社。12年に「淵庵村」を開業。15年、30歳のときに母・那美さんからコニファープランを引き継ぎ社長に就任。34歳。松本市寿北。

(嶋田夕子)