【ビジネスの明日】#08 株式会社イチヒャク代表取締役 市川武彦さん

「適正価格」生産者らと一緒に

松本市の駅前大通り沿いの事務所。手書きで書かれた社名「イチヒャク」の文字が目を引く。会社のモットー「1の可能性を100にする」から名付けた。市川武彦さん(41)が、コンサルティング会社として、地元の農産物などを「適正価格」で売る方法を生産者らと一緒に考え、地域活性化につなげようと昨年12月に設立した。
池田町で生まれ育ち感じるのは、地元で生産、作られるものは質が高いのに、生産者自身が価値を分かっていないこと。その状況で商品を売る場合、いきなり店を構えるのはリスクが高いと考えるのは当然だ。
事前にどのくらいの収益を上げられるか見当が付けば生産者も安心できるのでは―。
そこで、考えたのが「実証実験」。人通りが多く宣伝効果が見込める同社の立地を生かし、通りから中が見える事務所に設置した棚で手作り品を、春には外で農産物を委託販売する。農産物は都内で開かれるマルシェでも販売する計画だ。
価格は、原料費や労力を考慮し、市川さんが考える「適正価格」を提示。品質の良さを知った消費者に継続して購入してもらう仕組みも提案していく。

叔父が経営するワサビ農園併設のキャンプ場「白馬森のわさび農園」(白馬村神城)のディレクターも兼務している。
同キャンプ場は、元々は2011年にオープンした陸(おか)ワサビ農園。農園時代には商品を持って当時の東京・築地市場まで営業に行ったことも。だが、思うような値段では売れず、生産販売だけでは採算が取れないと判断した。
17年、叔父と相談し、農園を残しワサビの収穫体験もできるキャンプ場に転換。これが人気施設となり、売り方を変えたワサビも「適正価格」で売れるようになった。
課題を成功の「種」と捉え、それが「1」ならアイデア次第で「100」になる可能性がある|と信じた結果だ。
「地元に挑戦する場や機会があると感じれば、夢や力のある若者は地元に残り、地域の力になってくれるはず」。こうした思いも抱いている。
7、12、17日に売り上げや集客の向上、人事制度などの無料相談会を開く。詳しくは同社のフェイスブックで。

【プロフィル】
いちかわ・たけひこ 池田町出身。国立長野高専(長野市)卒業後、県内の大手広告代理店などに勤務し、企画営業やマーケティングに携わる。昨年12月に「イチヒャク」を設立し社長に就任。41歳。安曇野市三郷明盛。
(嶋田夕子)