夏 水分補給で「ベストパフォーマンス」

松本大人間健康学部専任講師・公認スポーツ栄養士 長谷川尋之さんに聞く

夏本番。スポーツをする人にとって、過酷な季節の到来だ。練習でも試合でも、ベストパフォーマンスをするために欠かせないのが、適切な水分補給。特に、学校の部活動や地域のクラブで活動する子どもたちは運動量が多く、水分補給がより重要となってくる。松本大人間健康学部専任講師で公認スポーツ栄養士の長谷川尋之さん(40)に大切さや最適な方法などを聞いた。

夏本番スポーツの現場で 大切さや最適な方法など

─子どもたちの水分補給の現状は
大阪体育大大学院に在籍中から、水分補給を研究テーマにしてきました。学生アスリートを調査して分かったのは、多くの選手が「そもそも水分が足りていない状態で運動を始めている」ということ。そこから、「運動前の水分補給」の重要性をずっと訴えています。
中学や高校ではなおさら、授業の合間にしっかり水分補給をする生徒は少なく、多くの子が脱水の状態で放課後の部活をしているかもしれません。朝練も、朝食をしっかり取っていなければ、水分が足りないまま運動をすることにつながります。
─水分補給はなぜ大切か
水分が不足した状態で運動しても、ベストパフォーマンスは出せません。その仕組みはこうです。
運動を始めると、体温が一気に上昇します。すると体は、体内の熱を外に出すために、水分を使って皮膚の血管に多くの血を送ったり汗を流したりする。失われた水分を補給しないままでいると脱水状態になり、循環血液量も減ります。
循環血液量が減ると、心臓が一生懸命全身に血を送ろうするので、心拍数が増えます。すると運動持続力が低下するし、疲れやすくなる。運動効率が落ちるわけです。水分が足りていない状態では、試合中に本来のパフォーマンスは発揮できないのです。

「給水タイム」を上手に活用して

─どう水分補給をすればいいか
体重が1%程度落ちると喉の渇きを感じるといわれていますので、その前に飲むのが理想的です。乾きを感じない程度にコンスタントに飲んでほしい。給水タイムは身も心もリセットされ、いいパフォーマンスにつながります。
体重減少が2%を超えるとパフォーマンスも低下します。できれば一度、運動の前と後で体重を測り、体重がどれだけ減るか知っておく。その数字が、その人にとって必要な水分補給量の目安です。
水分は胃に長くとどまらないので、運動前にしっかり飲むこと。運動開始30分前であれば、少なくともコップ1杯程度は飲んでほしい。これくらいの量ならば、運動を始める前に胃から腸に移動するので、胃腸の不快感に影響はありません。
─何を飲めばいい
部活など運動量が多い人だったらスポーツドリンクが理想的。できれば薄めずに飲んでほしいですね。食後の運動であれば、ナトリウムなどが食事で取れているので、水でも大丈夫です。
近年、運動前に深部体温を下げておく「プレクーリング」が注目されています。そこで使われているのが「アイススラリー」と呼ばれる、細かい氷の粒と液体がまざった飲料。市販の商品もありますし、スポーツドリンクを使って自分で簡易のものを作ることもできます。
凍らせたスポーツドリンクと冷やしたスポーツドリンクを3対1の割合でミキサーなどに入れ、かき混ぜれば出来上がり。保冷容器に入れて持ち運び、活用してみてください。