伝えるために-大人が学ぶ「性教育」

助産師・思春期保健相談士 栗岩助産院 栗岩美保さんに聞く

断片的な性教育で育ってきた昭和世代の記者。多様化、情報化社会となり性を取り巻く状況も複雑になった今、大人として子どもにできる「性教育」とはどんなものだろうか─。助産師で思春期保健相談士の栗岩助産院(塩尻市宗賀)の栗岩美保さん(52)に聞いた。

「自分ごと」考え行動

性は生きる力に関わる大切なこと。なのに日本では多くの大人が性のことを「恥ずかしいもの」と捉え、性教育も制限されてきました。海外では単に性と生殖だけでなく、包括的な性教育に段階的に取り組む国も多く、性教育は基本的人権の一つと認識されています。
包括的な性教育とは国連教育科学文化機関(ユネスコ)が発刊した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス2018年改訂版」に示された国際基準に基づき▽人間関係▽価値・権利・文化・セクシュアリティ▽ジェンダーの理解▽暴力と安全の確保などの8テーマについて発達段階ごとに進めていくことです。
日本では文部科学省が、子どもたちを性暴力の被害者、加害者、傍観者にしないための教育として「生命(いのち)の安全教育」を本年度から本格的に進めます。生命の尊さを学び、性暴力の根底にある誤った認識や行動、性暴力の影響などを理解していく学びです。
では、家庭で大人としてできることは何か。それは正しい知識を継続的に学び自分ごととして考え行動していくことです。「性教育」と構えることなく、興味を持ったことや疑問に思ったこと、子どもから聞かれたことなどを調べることから始めればいい。分かりやすい書籍やインターネットサイトもあるので参考にしてみては。

相談者として子どもの力に

行動の一歩として、子どもに伝えてほしい知識の一つに“プライベートゾーン”があります。米国発祥の言葉で「他人に見せても触らせてもいけない性的に関係ある自分だけの体の大切な場所」で、具体的には胸、お尻、性器、口。命につながる場所でもあります。
幼児期にお風呂に入りながら清潔にするための洗い方や、▽自分の体は自分のもの▽他人のプライベートゾーンを見たり触ったりしてはいけない▽体のどこであっても少しでも嫌な気持ちになったら「いやだ」と言っていい─と教えてみるのもいいでしょう。
小、中学、高校生など発達段階によって伝えることも違ってきます。子どもが性に関心を持った時も伝えるタイミング。何かを聞いてきたら否定せず顔を見ながら話をしたり聞いたりしてほしい。
性教育は自分や大切な人を知るため、守るために欠かせない知識。楽しく知ることでイメージも変わってきます。子どもが不安や心配になった時にインターネットに頼らせず“顔の見える相談者”として力になれる大人になるのが大切です。

【栗岩さんお薦めの参考になるサイト】
★命育
医師専門家とクリエーターによる家庭でできる性教育サイト
★ココカラ学園
一般社団法人“人間と性”教育研究協議会メンバーが監修。心と体をクイズ形式で学ぶ
★みんなの性教育
性に関する疑問や悩みについて考える
★AMAZE
包括的性教育の普及を目指す「NPO法人ピルコン」などが監修。動画で解説