【記者兼農家のUターンto農】#121 新米の品質

等級低めでも味は変わらず

新米が楽しみでもあり心配でもある。猛暑の影響はないのかー。
9月29日、農水省が今年の検査結果を発表した。8月末時点の1等米の比率は全国平均68・9%で、昨年並みだった。ただし、「(今後)例年より低くなる見込みとの報告を受けている」という宮下一郎農相のコメントを信毎は伝えた。米粒が白く濁る高温障害が出ているという。
長野県は81・3%だった。近年は全国トップ級の90%台後半が多く、それをだいぶ下回る数字だが、「例年とは比べられない」というのが、県農業技術課の見解だ。8月末には検査できるほど米がないのがいつもの信州で、実際、昨年のデータはない。
今年は暑さで収穫が早まったが、サンプルは少ない。検査は月ごとで、「これからの数字を注視したい」と同課。標高の高いところは影響が少なそうとは見込んでいるという。
そもそも米の等級とは何だろう?基準が法律で決まっている。整っている粒の多さ、白い未熟米などの少なさなどで、1~3等、規格外と判定される。
ポイントは見た目だということ。よくブランド米の「特A」が話題になる食味ランキングとは違う。等級が上でも下でも、炊いて食べた味はあまり変わらないという。
この点を強調する声が、今年は多く聞かれるかもしれない。
新潟県は8月末の時点で、1等米比が41%と半数を割り込んだ。そんな状況で、9月下旬に開かれた魚沼産コシヒカリの試食会。「1等米と全く変わらず(2等以下も)甘みが口の中に広がる」と話す記者の様子を地元テレビが報じた。
同じ頃、うちでも新米が食べられるようになった。「どうかや」と、父は精米した米をつかんで、眺めた。「たいしたもんだ」。標高700メートル超でできた米粒に白いものはわずか、全体の見た目は平年通りだ。
炊飯器のふたを開ける私に「光ってる?」と聞いたのは母。きれいに炊きあがった米は、どれが白い粒だったか分からない。かむと、じわり甘い。心配は解けてなくなった。