グラフィックデザイナー 渡辺明日香さん ビジュアル化する面白さを

松川村出身のフリーランスのグラフィックデザイナー、アートディレクターの渡辺明日香さん(38)が、音楽シーンなどで高い評価を得ている。昨年は野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」(7月、新潟・苗場スキー場)の視覚デザインの総合演出を担当。仕事の幅を広げており、さらなる活躍に期待がかかる。

子どもの頃から絵を描くのが大好きだった渡辺さん。小学校1、2年ごろに描いた絵が教員に褒められ、さらに絵が好きに。両親に画材をそろえてもらい、カレンダーの裏にひたすら絵を描いていたという。小学校4、5年ごろからは4こま漫画も描き始めた。
自宅はキノコ農家。仕事場だった山でよく遊んだ。「葉や石、土、虫などの色、形など、当時見たものが原体験として心に刻まれ、今の仕事にも影響している気がする」
進んだ大町高校では美術部、音楽部、フォークソング部を掛け持ち。バンドを組んで、Jポップやロックなども演奏した。夢中になったのはCDのジャケット。「インパクトがあり、奇想天外で表現が斬新。音楽のジャンルによってグラフィックの傾向が違うことも面白かった」

デザインに興味を持ち、多摩美術大造形表現学部デザイン学科へ。ビジュアルデザインを専攻した。ひたすら課題とアルバイトをこなす毎日。ライブハウスやクラブのフライヤー(PRチラシ)を手がけ始めたのもこの時期だ。高校の時に得たCDジャケットの情報を生かすことができ、「音楽やイベントの雰囲気をビジュアル化して人に伝えるのは面白い」と感じるようになった。
卒業後は広告制作の会社でグラフィックデザイナーとして技術を磨き、2年半で独立。27歳で米国へ留学した。
2年半にわたって現地で過ごす中で、「米国人の仕事への考え方、ライフスタイルの違いに衝撃を受けた」。それまでの仕事一辺倒から、自由にやりたいことをしたり、フライヤー作りに時間をかけたりするようになり、「フライヤーは3日で5案作るといった無駄なことができ、作風のストックができた」。

2017年から関わるフジロックの仕事も、関係者が音楽イベントのフライヤーを手にしたことがきっかけ。ポスターの他、一昨年からは現地に入りゲートのペインティングも手がける。昨年は松川村で開いた「松川クラフトビールフェス」のポスター、会場装飾を担った。
今年は東京・表参道のアートギャラリーのディレクターとして企画展示に携わる予定。県内の仕事も増やしたい考えで、「今の自分があるのは、地元から得た食べ物、自然、人との関わりといった心や体への栄養素のおかげ。地域に貢献できたらうれしい」と話す。

【プロフィル】
わたなべ・あすか 1985(昭和60)年、松川村生まれ。多摩美術大造形表現学部を卒業後、広告制作会社やデザイン事務所を経て、フリーランスに。仕事はブランディングやロゴデザインから、イラストレーション、ペインティングまで多岐にわたり、カラフルで幾何学的かつ独創的なグラフィックを得意とする。東京都在住。