着物や家具再生 和の心を若者に

洋服が主流になっても、古い着物や家具は宝―。大切に使われた物を若い人に伝えたいと、お年寄りの困り事に対応する会社を経営する市川仁美さん(67、上田市)、着物ドレス制作の濱田ちさ子さん(79、塩尻市宗賀)ら4人は1月、「継承和ごころプロジェクト」を立ち上げた。
「古い物や伝統、知恵を忘れてしまうのはもったいない」との思いでスタート。最初の活動は4月20日、松本市中央2の中町・蔵シック館で開くイベント「着物の花咲く蔵時間」だ。打ち掛けドレスの展示・試着で着物に興味を持ってもらい、新しい着方を提案する。
たんすなどの家具を次の人に渡す方法も模索。市川さんは「どれも二度と作れない物ばかり。日本の心を取り戻すきっかけに」と話す。

独自の技術や文化つなぎたい

介護保険外のお年寄りの困り事に対応する「あったら・かいご」を運営する、市川仁美さん。担当していたお年寄りが施設に入る際、「家にある物を片付けて」と言われたことが、「継承和ごころプロジェクト」を始める核になった。「たんすは材料、技術とも今ではなかなか手に入りにくい。捨てるには忍びない」と市川さん。
「着ていた着物は何とかなりませんか」。お年寄りの言葉に心が痛んだ。絹が使われ、刺しゅう、織りなど全て手仕事。やはり何とか生かしたいと思ったという。
プロジェクトのメンバーの一人、濱田ちさ子さんは、打ち掛けなどをドレスにすることで魅力を伝え、今の時代に合った使い方、着方を提案している。
濱田さんは若い頃から洋裁が好きで、子どもの洋服などを作っていた。打ち掛けなどをドレスに仕立て直すようになったのは、20年前、東京の店で白無垢(むく)が売られているのを見たのがきっかけだ。
誰かが嫁ぐ時に着た物がこんなに安く売られている―。外国人が購入しベッドカバーなどにしていると知り、衝撃を受けた。「絹で作られ、縁起のいい独特な絵柄がデザインされている。このままで着られないのなら、ドレスに仕立て直してみよう」。洋裁学校に通い、着物をドレスに作り直す勉強を始めた。
着物地は服地より幅が狭く、剥いで作らなければいけないため、柄合わせが難しい。最初は誰かに着てもらう当てもなく作り始めたが、結婚式やパーティーなどに使いたいという人に、貸し出すようになった。
「感動した」。市川さんはドレスを見た時、濱田さんの着物への思いに心を打たれたという。「打ち掛けはドレスに再生できる。若い人が着物に興味を持つきっかけになればいい」。こうした思いが、4月20日に松本市の中町・蔵シック館で開く「着物の花咲く蔵時間伝統美に包まれて~和を着る・和を遊ぶ」につながった。会場で打ち掛けドレスを展示、試着できる。
着物をドレスに作り替える技術も継承していく。市川さん、濱田さんは「帯をクッションにするなど、着物は着物という固定観念を捨て、自由に楽しんでほしい」。たんすなど家具の利用法も模索している。日本ならではの技術や文化、お年寄りの知恵などを、若い人にバトンタッチするのがプロジェクトの役割だ。
当日は午前10時~午後5時。参加無料。定員6人(身長155センチ以上、高校生以上)。試着は予約優先。申し込み、問い合わせは市川さんTEL080・4380・4103